院長の困りごと 12

ファン患者にさせる「問診テクニック」を知りたい…

【1】医師が患者さんとのコミュニケーションを円滑にする方法

コミュニケーションの重要性とは…

社会全体に求められている医師は、知識や技術面の能力はさることながら、「コミュニケーション力が高い医師」であると言われています。患者さんとのコミュニケーションは、直接的にフィードバックを貰えないことが大半なため、改善できないままになっていることも多分にあるように思います。このコーナーでは、患者さんが抱えている不満と、医師が患者さんとのコミュニケーションをスムーズにする方法を私のコンサル経験からお伝えします。

目に見えない「コミュニケーション」への不満…

病院を含めた、多くの医療機関では、「待ち時間」「プライバシーへの配慮」「清潔感」「待合室の充実」など、目に見えるところに患者さんのチェックポイントがあると思われているのではないでしょうか…?。

しかし、患者さんが最も重視しているのは、「コミュニケーション」だと言われています。「わかりやすい説明」や「些細な気遣い」など、目に見えないところです。気遣いの中には、こちらの話をよく聞いてくれる話しやすい雰囲気であるなどという点も含まれます。こちらに顔を向けてくれない名前を呼んでくれないといった些細なことでも、診断や治療そのものに対しての不信感につながってしまいます

「傾聴」と「患者視点」を徹底する…

コミュニケーションを円滑にする方法としては、患者さんの立場にたって考えながら対応すること、患者さんの話をきちんと聴くことが挙げられます。

傾聴に関しては、特別なスキルがなくとも、「まずは自分が話すより患者さんの話を聴く」「話を聞きながら、うなずく、相槌を打つ」など心がければ誰でもできる、ほんの少しの対応の改善で、評価は格段に上がります。

患者さんには「診療の説明をわかりやすく、不調や痛みの原因、検査の目的、薬についてなど丁寧に教えてほしい…」という気持ちがあります。医師にとっては、たくさんいる患者さんのうちの一人だとしても、患者さんにとっての医師はとても大きな存在であり、初対面では緊張感を持ちやすいということも念頭に置いておく必要があります。

ちょっとした心がけで、コミュニケーションを円滑に…!

患者さんは「痛み、不安、緊張」などいろいろな感情を抱えて医師のもとへやってきます。特に初診の場合はコミュニケーションにも不安を感じています。
医療機関や治療に対して安心感や信頼感を持ってもらうためにも、ちょっとした、声がけや頷きを心がけると良いでしょう。
実行することで効果はすぐに出てきます。

【2】医師のコニュニケーション能力アップ術

患者さんが前向きに治療に取り組むためには、医師との良好なコミュニケーションが必要です。
いうまでもなく、医師が努力すべき部分は大きくなります。とはいえ、全ての医師がコミュニケーションを得意としているわけではありません。対人関係が苦手という人もいるでしょう。でも、大丈夫です…!
要点を踏まえておきさえすれば、良好なコミュニケーションを図ることはできます。

「気にかけている…」ことを伝えると患者さんとの信頼関係が深まる

病気であれケガの治療であれ、患者さんというのは絶えず不安を抱えています。そして、不安な時ほど孤独感を抱きがちです。
特に一人暮らしの方などは、その傾向が顕著といえるでしょう。
ある開業医が、一人暮らしの患者さんを“訪問診療”した際のお話です。
一人暮らしの患者さんは、淋しく感じる時や、病気に対して不安な気持ちに襲われる時もあるはずです。しかし、その患者さんは、一人になってしまうことに対して不安な気持ちを抱いていませんでした。その理由は医師の言葉にありました。診察を終えた医師が帰り際に「何かあればお電話くださいね。いつでも構いません。私か看護師がすぐに駆けつけますから…」と、患者さんに声をかけていたのです。その言葉に対して「ありがとうございます。そう言って頂けるととても救われます…!」と患者さんが“心底ほっとした表情”でお礼を言っていたそうです。さらにこの医師は、毎回帰り際にこうした言葉をかけ続け、利用者さんから信頼を得ることができました。

この様に、コミュニケーションには「きちんと想いを伝えること、そしてそれを継続すること」の2点を押さえておくことが重要です。例えば、診察時に患者さんに挨拶だけでなく「○○さん元気…?」「今日の調子はどう…?」と一言付け加えてみましょう。その場でパッと相手の心をつかむような技術ではありませんが、この小さなコミュニケーションを積み重ねていくことで、相談しやすい存在に近づいたり、何か困った時には頼ってくれたりと、信頼関係を深めることにつながります。

診療前の「ひと工夫」が円滑なコミュニケーションにつながる

例えば、外来において、患者さんが目の前に座ってから“カルテ”を見るのではなく、ざっと目を通してから診察室に迎え入れるだけでも印象は変わります。カルテの情報に目を落とすことなく、「ちょうど1週間ですね。経過は順調かなと心配していましたが、その後いかがですか…?」 こんな一言から診察を始めれば患者さんは「先生はずっと気にかけてくれていたんだ…」と、主治医への信頼を増してくれるものです。また、この様なちょっとした一言は、患者さんの体調の話でなくともかまいません。

「ワンちゃんの具合が悪くて落ち込んでいるとおっしゃっていましたが、ワンちゃんよくなりましたか…?」
一見診療に無関係な事柄であっても、相手が大切にしている物事を自分も気にかけているのだという意思を示せば、心の距離感は縮まります。「これは…!」と思える事項は、カルテの余白にメモ書きしておくのも1つの手かもしれません。
心の距離が縮まれば、治療への自助努力が強まります。円滑なコミュニケーションは、良好な治療成績の素因になるのです。

コミュニケーションが苦手だと感じている院長も、たった一言でも患者さんを思いやる言葉をかけることで、その関係が飛躍的に向上する可能性もあります。患者さんとの信頼関係構築の糸口は、あなたの患者さんを思いやったその一言なのかもしれません。

医業経営を成功させるコミュニケーションの磨き方

開業医にとって「コミュニケーション能力」は必要不可欠です。患者さんとの対話はもとより自院のスタッフや地域の医療機関との連携など、勤務医時代よりもさらにコミュニケーション能力が問われます。

良好なコミュニケーションづくりは「第一印象」から…

「聞き上手」「語りかけ上手」になる…。
私たちのコミュニケーションの多くは、視覚情報によると考えられています。医師の場合、初診の患者さんとは当然初対面になります。第一印象で「この先生は優しそうだ…!」「何でも話せそうだ…!」など好印象を持ってもらえれば、その患者さんの口コミで地域にも評判になり集患にも結びつきます。

“清潔感のある服装”、“柔らかな表情”、“落ち着いた話しぶり”など、一目で好印象を与えられるように気を配ることがより良いコミュニケーションを築く第一歩といえます。患者さんだけでなく、スタッフ募集時の面接でも、「この院長のもとで働きたい…」と思ってもらえるような第一印象を与えたいものです。

「聞き上手」「語りかけ上手」になる…!

コミュニケーション能力の中でも、「聞き上手になる」ことは大きなポイントです。
患者さんが「自分の病気についてどう思っているのか…」「どんな不安を持っているのか…」「どんな治療を受けたいのか…」など、親身になって聞くことが、患者さんの心をひらくことにつながります。
その意味で、医師には“優秀なインタビュアー”であることが求められます。

また、「語りかけ上手…」であることも大切です。
例えば、一人暮らしの患者さんを訪問診療するときなど、「何かあったときには電話をくださいね…!」「連絡を頂ければいつでも伺いますから…!」などと一言声をかけるだけで、一人暮らしの不安を抱える患者さんには心の支えになるでしょう。患者さんの状況を考え、どんな言葉をかければ良いのか、最適な言葉を選べるようになればコミュニケーション能力は一段とアップします。

地域の“開業医”やスタッフとの関係構築

勤務医の場合には、他科の医師とのコミュニケーション作りは、自ら働きかけなくても院内での飲み会や親睦会が設けられたりしますが、開業医になるとそうした機会を誰かが作ってくれるわけではありません。
開業医になると、地域の診療所の医師やスタッフと上手にコミュニケーションを取ることが大切になります。専門外の患者さんを紹介したり、その逆に紹介してもらうなど、医師同士で良好な関係をつくっておくメリットは大きなものがあります。
普段から地域の診療所の医師やスタッフと親睦会を開くなど、積極的にコミュニケーションづくりをしておきたいものです。

また、医師会の会合に顔を出しておくことも医師同士のつながりを深くするためのポイントです。
特に“医療モールでの開業”では、“モール内医師の相互連携がモール全体の医業経営成否のカギになる”ともいわれており、医師同士のコミュニケーションづくりが不可欠です。

地域の情報を収集する

患者さんやスタッフ、地域の診療所の医師など多くの人と接するとき、“自らが話題を豊かにしておく”こともコミュニケーション能力を磨く上で重要です。そのためには、スポーツ、芸術、芸能、社会・政治などの情報から、さらに子どもや主婦層で流行っていることまで、幅広い情報を得ておくと、患者さんやスタッフとの会話も弾みます。
地域に密着している開業医としては地域情報にもアンテナを張っておくと良いでしょう。
地元情報誌、区役所などの広報誌などから地域情報を収集しておけば、さまざまな層の患者さんとより親しい人間関係を築くこともできて、診療がスムーズに進みます。

自院のwebサイト、壁新聞などによる“情報発信”に挑戦する

情報を収集すると同時に、webサイトや診療所に貼る壁新聞などを制作して情報を発信するのも、コミュニケーション能力を磨く一つの方法です。webサイトの制作には、どんな情報を発信したいのか…コンテンツを固め、それからデザイン作業などに移っていきます。パソコンに慣れた人ならwebサイト制作ツールを使って自分で作ることも可能ですが、そんな時間はないという場合には、WEB制作会社に依頼することもできます。

手書きの壁新聞を診療所に貼るのも、アナログ的で意外に新鮮かもしれません。「介護の仕方」「花粉症対策」「熱中症予防」などの医療系の情報から、診療所のスタッフからの患者さんへのメッセージなど、様々な話題があるはずです。患者さんや地域の人々との関係づくりの役割を果たすのと同時に、壁新聞をつくる作業を通じて、自院のスタッフと一層コミュニケーションを深めることができます。

開業医に求められるコミュニケーション能力

開業をした医師にとって重要なのは医療スキルや資金面だけではありません
地域社会に暮らす、様々な年代の患者さんと日々接する開業医には「コミュニケーション能力」が求められます。
ここでは、「患者さんとのコミュニケーションで開業医が気を付けるべきポイント」をレポートします。

医師と患者さんのかみ合わない問答

一昔前は、患者さんが診察の時に「風邪をひいたようです」というと「風邪かどうかは私が決めること」と怒る院長もいました。また、現在のように診断技術が進んでいない時代では推定に基づいて病名をたどって行くことが多く、患者さんに「ここが痛いです…」と言われると「そんなはずはない…!」と返す院長もいました。

付き合いのある院長は、「患家(かんか=医者の立場から見た患者さんのいる家のこと)から学ぶ」という姿勢を持ち、患者さんの立場に立った医療を実践するため、コミュニケーション不足によるトラブルは殆どありません。

成功した院長は、殆どの方が“コミュニケーション上手… ”

最近では、患者さんの言うことより自分の判断を優先させ、一方通行になる院長はあまり見かけなくなりました。開業医は、患者さんや人間が好きでなければ成り立たない職業なので、こうした傾向にあるのではないかと思います。一方で研究職の医師たちは、コミュニケーション能力を厳しく問われる機会が臨床医に比べるとやや低くなりがちです。開業医は地域の中で生涯、地域の患者さんたちと日々向き合う仕事です。患者さんの視点を持ち合わせなければ地域から敬遠されるし、事業としても成功する可能性が低くなります。お付き合いした院長で、開業を成功させた殆どの院長が「コミュニケーションスキル」が優れていました。
このスキルの優れた院長は患者さんとのコミュニケーションだけではなく職員とのコミュニケーションもしっかり取られ、診療所経営に必要な関係を築いていらっしゃいます。

患者さんとのトークで様々な事が見えてくる

開業医の成功の秘訣は2つあります。
一番目には「覚悟」、二番目は「コミュニケーション能力に優れていること」です。円滑なコミュニケーションを取る題材は、様々な切り口があります。

インフルエンザ、花粉症、食中毒、熱中症などの季節を絡めたトピックスが比較的取り入れられやすいでしょう。
それに患者さんの個別性を加え、そして家族構成の全員にもアプローチをしてゆけば、怖いものなしです。
間違っても診察室の中で「痛いです…!」「そんなはずはない…!」という会話がないようにしましょう。

患者満足度と医師のコミュニケーションスキル

事例紹介:
開業して3年ほど経過し,外来患者数も順調に増えていたのですが,院長は,外来患者を診ながらも,何か「しっくりとした感じ」をもてないでいました.例えば,こんなやりとりです.

患者「昨晩は胃がすごく痛かったのです…」
院長「そうですか.痛いのは,食後ですか…? 食前ですか…?」
患者「食事の前ですね.この痛みは1カ月ほど前から出てきました…」
院長「そうですか.それでは,診察しましょう…」
患者「……はい」

そこで,患者満足度調査を実施しました.その調査結果は,衝撃的でした.
医師の面接で大切とされる,様々な項目に問題があったのです.
患者数の増加に伴い,“数をこなすような態度”が出ていたのかもしれません.
まず、患者さんの訴えに耳を傾ける態度・初心の原点に戻ることが必要でした.
これからも,定期的にこの満足度調査で患者さんの声をモニターしながら患者さんの不満の芽を早く刈り取り,また,医療の質を上げていくために努力したいと院長は考えています.

◆なぜ患者満足度は重要なのでしょうか…?

一般の“病院・診療所の外来患者さんの満足度”と“医師のコミュニケーションスキル”の相関関係を調査した研究があります.
患者さんの満足度は…、

・受付・看護師の態度,待ち時間の満足度,
・医師に関する満足度,
・自覚症状や精神的な悩みの軽減に関する満足度

以上の3点から分析した場合,約7割までが医師に関する要因で決定されているそうです。また,その医師に関する要因をさらに分析した結果は,医師の聴く態度・わかりやすい説明であるといわれています。

以上の様に,医師のコミュニケーション能力は,外来患者の満足度と高い相関関係があることがわかっています.それでは,この“患者満足度”は医師にとって,どのような意味があるのでしょうか…?
患者さんの満足度が上がることは,その後の患者・医師との信頼関係を良好にして,服薬などのコンプライアンスも上がり,治療効果も良くなると言われています。私がお付き合いのある診療所では,開業2年目,3年目,さらに5年目,7年目と患者満足度調査を実施しています.この調査により、「様々な課題が見えてきました…」とのことです。

患者満足を高める「取って置きのスキル…」

まずは,3年目の満足度調査です.3年目に入って外来患者数も少しずつ増加し,外見上は順調に見えました.
しかし,何か,患者さんを診ていて“しっくり来ない感じを抱いていた”のです。調査結果を見て,愕然としました.
医師のコミュニケーションの様々な項目において,低い評価だったのです。
特に,「話の整理…」・「うなずきながら聴いた…」・「共感…」が課題でした.
実は,これらの項目は全てベテランのドクターでも忘れがちで,しかも,医師が達成した場合は,患者の満足度が比較的高くなるいわゆる「取って置きのスキルです.

「整理・要約する…」・「うなずきながら聴く…」・「共感…」

具体的に説明します。一つは「話を整理・要約すること…」です.
「少し○○さんのお話をまとめさせて頂けますか…?」との一言は,患者さんに「この医師は,自分の言った内容をしっかりと
受け止めている…」と感じさせるでしょう.また,話の流れを交通整理することにもなります.

次に「うなずきながら聴いた…」が挙げられます.患者さんが、診察の導入部で,訴えを語りだした際,その言葉に真剣に耳を傾けているサインとして,この態度は重要です。「うなずきながら聴く…」、医師の姿をみて自分の訴えが医師によって受容され、会話が促されていることを患者さんは感じ取るのだと思います.

最後に「共感…」が挙げられます.患者さんが「その時は胃がすごく痛かったのです…」と言ったとします.
その場合「そうですか…」と素っ気なく答えるのと「それは大変でしたね…」と応じるのとでは,天と地との差があるでしょう。

以上これらの3つのスキルは、患者さんとのコミュニケーションの中で、意識して使うことで、患者さんの診療に対する満足度を上げ、「医師患者関係」を良好なものにする「取って置きのスキル…」です。

初心に返る…

ところが開業したての多くの院長は、外来患者さんが増えてきた中で,これらの取って置きのコミュニケーションスキルを十分に使いこなす余裕を失っている方が多いのも現実です。“患者数をこなす”態度が出ていたわけで,大いに反省すべきこととよく聞きます。この満足度調査は開業当時の「患者さんとのコミュニケーションを何よりも大切にしよう…」とした初心に返ることを気づかせてくれたとの声をよくお聞きします。短い時間内でもメリハリを利かせて,上記の項目を意識しながら利用するように心がけている院長もいます。「今日は話を整理する日…!」などと宣言し,コミュニケーションをとるように心がけているそうです。

職員とのコミュニケーションの改善

◆スタッフの思いを汲み上げる
ある診療所での5年目の「患者満足度調査」の結果です.
今度は,患者さんからの“看護師や受付・事務への評価”が低く「視線・物腰・言葉に温かみがあった…」「笑顔で迎えてくれた…」などの項目に課題が出てきました.院長が「自分自身が患者さんとのコミュニケーションに注意を向ける…」と意識はしたが、
逆に「職員とのコミュニケーションをとっていなかった」のが大きな要因ではないかと考えたそうです.スタッフが高い満足度で働く環境であれば,患者さんへのレベルの高いサービスが提供でき,ひいては,患者さんの満足度も上がるはずです.

脇の甘さを実感したそうです.そのため,定期的なスタッフとの話し合いを集団・個人を対象に頻回に行う中で,スタッフの考えにいっそう耳を傾けることにしました.
また,その話し合いの中から出てきた「スキルアップをしたい」「楽しいスタッフ間のイベントが欲しい」などを汲み上げるようにしたそうです.

医師が“コミュニケーション能力を高める方法”とは…?

医療行為は医師一人の力で行うものではなく、医師にとってもコミュニケーション能力はとても大事なものです。
コミュニケーション能力を高めるためにはどのようなことをすればよいのでしょうか…?

1、患者さんに対するコミュニケーション

診療所の外来では、日々様々な患者さんと接します。患者さんは多かれ少なかれ不安をもって診療所に来ているため、その不安を軽減するように接することが重要と言えます。

◆柔和な表情をすることを心がける…
表情は対面する人にとって大きな影響を与えます。怒ったような表情をしていれば患者さんはストレスや不安を感じてしまいます。反対に柔和な表情をしていれば、落ち着いて説明や治療の方針などを聞くことができます。
表情を意識するのは難しいかもしれませんが、普段から表情が硬い印象があるなどと指摘のある医師は、柔和な表情をするように心がけましょう。朝、顔を洗う際に少し練習してみると、表情も徐々に変わっていきます。

◆“ハキハキ”と通る声で話す…
ボソボソとした小さい声で話すと、患者さんは「病気が悪いのだろうか」「この先生に任せて大丈夫だろうか」という印象を持ってしまいます。話すときはハキハキとした声でしっかりと通るように話しましょう。声の大きさには個人差がありますが声の小さい人も最低限のコミュニケーションを取れるくらいの声量になるように意識しましょう。

◆患者を気に掛けていることを伝える
医師の視点では患者さんは数十人応対するうちの一人ですが、患者さんにとって医師は、大抵の場合で一人だけです。自分のことを気に掛けていることを分かると嬉しくなりますし、医師に対する印象も良くなります。
例えば内科の外来で患者さんを受け持っている場合は、よく来る患者さんに対しては軽く世間話を振ってみましょう。
前回どのような会話をしたかを何となくでもいいので覚えておくと、次回の話のネタに繋がります。前回の会話の内容に関連した話をすると、医師としてその患者さんを気に掛けていることを伝えることもできます。

2、同僚に対するコミュニケーション

院長は、看護師や医療事務・受付などと関わりながら仕事をしていくことになるため、普段からコミュニケーションを取り、良い関係をつくっておくことも大切です。

◆休憩時間などに気軽に声をかける…
あまりに疲れているなどではない限り、休憩時間や朝の始業前に気軽に声を掛けてみましょう。内容はなんでもよいので、「今日は寒いですね…」「休みの間は何をしていましたか…」といったことで十分です。“自分から話しかける”ということは意外に大切で、気さくな人だなと思ってもらうことで向こうから声を掛けてもらいやすくなります。

◆どこかに出かけたらお土産を買っていく…
単純なことですが、普段から同僚として意識をしていることを伝えるきっかけになります。
お土産を買っていけば、「どこにいったんですか…」という会話も生まれやすくなります。
気遣いと話した量は信頼関係に直結しやすいものですから、日ごろから気遣いの姿勢を見せるようにしましょう。

◆会話をする話題を仕入れておく
いざ雑談しようと思ってもなかなかできないこともあると思います。そういう時に困らないために「話のタネ」を仕入れておくのもいいでしょう。新聞などでニュースを読むのもいいですし、もっと気軽な旅やグルメなどの雑誌を買って読むのもよいでしょう。引き出しは多ければ多いほど、いろんな人と楽しく話せるようになります。負担にならない程度に日ごろから話のタネを増やす様に意識してみましょう。

【3】患者さんが医療従事者へ求める接遇マナーとは…

医療従事者には、「話をよく聴いてくれる…」「親身になって対応してくれる…」「話しやすい…」という3つの要素が求められています。これらが満たされることで、患者さんの心に“診療所に対する信頼感”が生まれます。
患者さんから、かかりつけ医として選ばれるためには「気配り」や「気づかい」といった接遇マナーが必要です。
患者さんの仕草や表情から、患者さんが口に出せない思いや不安を感じとり、どの様に対応していくべきかなどを考え行動する力が求められています。

患者さんが求めている“医療接遇”の基本的な3要素とは…?

患者さんは、医療従事者の態度をよくみています。
この人はわかりやすい説明をしてくれる…
自分たちの声に耳を傾け丁寧に聴いてくれる…

といったことを感じて初めて医療従事者を信頼してくれます。
医療現場で必要とされる「接遇マナー」は多岐にわたります。しかし、ベースとなる要素は3つに絞ることができます。それは、
話をよく聴いてくれる…
親身になって対応してくれる…
話がしやすい…
の3つです。

例えば、患者さんが診察室に入室しても医師がパソコンの画面から目を移さず、問診を初めてしまったらどうでしょうか。
視線を合わすこともなく「今日はどうされました…?」と質問されると、患者さんの心には「この医者は、私の話をちゃんと聞いてくれるのだろうか…?」といった不安や不満が芽生えてしまうのではないでしょうか。

患者さんに「良い診療所に巡りあえた…!」と思ってもらうためには、まず、医師や看護師など医療従事者の方から
○○と申します。よろしくお願いします…」などの挨拶をしましょう。そして「○○さん今日はどうされましたか…?」と
患者さんの名前を呼んで話を始め、患者さんのことをきちんと把握していることを示すようにしましょう。

かかりつけ医院として選ばれる医療機関の接遇スキル

患者さんが「この診療所にまた来たい…」と思う理由の大半は、“医療従事者の対応の良し悪し”が占めています。
医師の腕が良かったという要素も大きいですが、「スタッフみんなの感じが良かった…」と答える方は少なくありません。
それゆえ、医療機関に求められているのは表面的なサービスではなく、
「不安を癒やしてくれる」
「安心して治療を受けることができる」

と患者さんに思ってもらえるような質の高い接遇です。
質の高い接遇を実現してくために、医療従事者は、“気づく力”そして“自分で考え行動する力”を備えていきましょう。
患者さんの置かれている状況を把握し、年齢や生活環境に合わせて言葉を選んで声を掛ける、患者さんの表情や仕草を通して体調や心情などを推し量り、対応を変えていくなど、患者さんひとりひとりに合わせた手厚いケアを行うことで患者さんと信頼関係を築くことができます。
そして、「笑い」も大切な要素です。診療所は、病を持った方が集まるところですので、意外に思うかもしれませんが、

明るくて良く笑う看護師さんやお医者さんにほっと心が和む…」と好感を持つ患者さんも多いです。

患者さんに伝えるではなく、伝わるコミュニケーションを…!

インターネットなどの普及により、患者さんご自身が多くの情報を得ることができるようになりました。
また診察を受けている担当医のほかに、違う医師から意見を聞くことができる“セカンドオピニオン”が浸透するなど、患者さんが治療方法を選択する機会が増えています。こういった時代の流れにそって、医療機関には、

患者さんに「伝える」コミュニケーションではなく
患者さんに「伝わる」コミュニケーションが求められています

患者さんに伝わるコミュニケーションを行うためには、
「患者さんの様子をよく見る」
「話をきちんと聴く」
「患者さんを尊重し思いを受け取る」
といった心構えが大切です。
医療従事者から説明やアドバイスをする際は、患者さんの心に届く様に、
やさしい語り口で、わかりやすい表現を選ぶようにしましょう。
同じ患者さんでも、体調や気持ちなどのコンディションは毎回異なります。
それゆえ、最適な対応は都度、変わってきます。
医療従事者の「気づき」「考え行動する力」で患者さんの不安を少しでも和らげていきましょう。

【4】多くの患者さんから選ばれている診療所が実践している患者さんの立場に立った「気配り」の実践事例

今、診療所においては、経営改善の源泉として“患者さんの満足度向上が大きなテーマ”となっています。
ここでは、このテーマを取り上げます。

◎相手の立場に立って何ができるのかを考え行動する

ある診療所の院長より「職員に対して接遇教育を熱心に取り組んでいるが、実践にむすびつかない…患者さんの「満足度向上」を実現させている他の診療所の取り組み事例を教えてほしい…」というご相談が増えております。
患者さんの満足度向上を実現させるために職員の接遇が重要とされ、「正しい敬語や美しいお辞儀のやり方」を接遇教育で熱心に施されていますが、接遇のよい診療所とそうでない診療所の差は、「気配りの差」と感じております。
『気配り』とは、いろんな解釈があると思いますが、私は、相手の気配(けはい)を感じとり、相手の立場に立って、何ができるのかを考え行動することと定義しています。これまで多くの診療所を見てきて感じることは、職員がいくら正しい敬語や、美しいお辞儀を身につけたとしても気配りを欠いた単なる患者対応術に止まっている診療所では、患者さんの満足度は低くなっています。診療所に求められるのは、不安を抱く患者さんに対し、その不安を取り除く「気配り」です。

ここからは、多くの患者さんから選ばれている診療所が実践している!患者さんの立場に立った「気配り」の実践事例について紹介します。

◎患者さんの立場に立った「気配り」の実践事例

☆診療開始前は待合室に出て全員で挨拶
外来を開始する5分前に、診療を担当する「院長」、「看護師」、「医療事務」スタッフ全員が待合室に出て「おはようございます。本日の診療を担当する医師の○○です。看護師の○○です。事務受付の○○です。本日もよろしくお願いします」と待合室に出てご挨拶を5年間続けている診療所があります。患者さんからも大好評でこ診療所の患者数は増加し続けています。

☆お呼び出しはねぎらいと感謝の言葉を添えて

患者さんは自分の順番を待っています。そして、患者さんは不安や緊張を持っています。
必ず、「お待たせいたしました…」のねぎらいの言葉は伝えましょう。患者満足度の高いある診療所の看護師は、長時間待って頂いた患者さんに「〇〇さん、長い時間、待っていてくれてありがとう…!」と感謝の言葉を伝えていらっしゃいます。

☆初診の患者様の目線に合わせた言葉をかける

初診の患者さんは不安と緊張を持っています。不安や緊張を解き解す言葉がけをしてあげましょう。
例えば、「〇〇さんおはようございます(お待たせしました)。」など患者さんの目線にあわせて言葉がけをする。
また、初診の患者さんは、次の行動をどうしたらいいかわからない事が多くあります。
「こちらへ(手で示して)おかけいただけますか…?」「お荷物はこちらに置いていただけますか…?」など、
命令形・指示形ではなく依頼形・疑問形でお伝えしましょう。

◆一人一人の患者様に丁寧な診察・処置を実践

(1)新患を迎える場面
多くの患者さんに選ばれている診療所の院長が必ず実行している“言葉がけ”をご紹介します。
患者さんが診察室に入ってくる際に、医師が「おはようございます。本日の診療を担当する医師の○○です…」と立って会釈して診察を始めます。
そして、診察椅子に座って、患者さんの目線を合わせ「今日はどうなされましたか…?」と問診を始めるというごくごく当たり前の言葉がけなのですが、多くの患者さんに選ばれている診療所の医師は、どんなに忙しくても一人一人の患者さんに丁寧に実践し続けていらっしゃいます。

(2)処置室での場面
患者さん緊張を解き解すために、先行して説明する。
「今から点滴をしますが、1時間ほどかかります。お手洗いはよろしいでしょうか…?」
「今から採血します。最初だけチクッとしますからね…」など。また、患者さんの身体に触れるときは急に触れると驚かれますので、「失礼します…」とお伝えして患者さんの身体に触れることを心がけてください。
次に、「患者さんとのコミュニケーションを工夫している」診療所の事例をお伝えします。

◎患者さんとのコミュニケーションを工夫している事例

(1)名前を呼ぶ
患者さんの名前を呼ぶ。一見、当たり前と思われがちですが、実際できていない医療機関が多い。
「○○さん、おはようございます…」「○○さん、お大事に…」「○○さん、点滴を入れるのでチクってしますよ…」など患者さんの名前を呼んで挨拶する、動作確認など名前を呼ぶ事は良好な関係づくりの第一歩です。是非、実践頂きたいと思います。

(2)その患者さんの近況を覚えておき話題にする
ご家族の状況、近況などその患者さんがお話しされたことを記録して、次回、来院されたとき、話題にする。
例えば、「前回、来院されたときにお話しされていた○○の旅行はいかがでしたか…?」、
「お孫さんにお会いするとお伺いしていましたがいかがでしたか…?」など近況を話題にすることで患者さんは、自分の話を覚えていてくれた事に感動頂けます。弊社がサポートしているある診療所では、患者さんとのコミュニケーションを記録するシートへ「患者さんの近況」の記録をルール化しています。

(3)患者さんを診療所全員で診る体制をつくる
医師だけではなく看護師、医療事務・受付などスタッフ全員で患者さんとコミュニケーションをとる。
看護師には医師の説明フォロー、受付職員には患者さんの近況の記録、待合室で“長時間待っている患者さんへのフォローを行う”など職員全員が患者さんを診るという意識で日々の診療をしている診療所もあります。

(4)患者さん同士が交流できる場をプロデュースする
同じ病気を抱えた患者さん同士が、悩みや愚痴を言えるコミュニケーションの場(例:糖尿病の会)をプロデュースする。
会のメニューとしては患者さんの闘病体験の発表、医師からワンポイントをお話し頂き、病気に向き合うためのモチベーションをアップして頂く機会にしておられます。

まとめです・・・

人間関係が希薄になっている今の時代だからこそ、“患者さんとのコミュニケーション”を工夫することは今後の診療所と患者さんへの応対のあり方を考えるうえで大切な事ではないでしょうか…?
患者さんとのコミュニケーションを創意工夫して良好な関係をつくっている診療所には「熱烈なファン患者さんが多数いて…」、
「患者さんが患者さんを呼ぶ口コミが巻き起こっています…」
ぜひ、自院にあったやり方で“患者さんとのコミュニケーションを工夫して良好な関係づくり”にチャレンジしてみてください。

最後に…

以上、「患者さんへの気配り」と「患者さんとのコミュニケーション」の実践例を紹介しました。
重要なことは、ただマネだけをするのではなく、患者さんの「安心」と「満足」を実現したいという想いを常にもって行動すること

多くの患者さんに選ばれている診療所は、
患者さんの立場に立った「気配り」を当たり前のこととして、愚直に実践し続けることができています。

今後の「診療所と患者さんのあり方」を検討するうえで参考にして頂ければ幸いです。

カテゴリー