心温まる患者さんから好評の「接遇のポイント」を教えてほしい…
【1】カンタン…! 診療所接遇の奥義
患者さんとのコミュニケーションは、実に奥が深く、場面場面でどのように対応したらいいのか、悩んでおられる院長・スタッフも大勢いらっしゃいます。ここでは「貴院にあった接遇方法」を考えてみましょう。コミュニケーション能力を向上させるためには、「慣れ」や「長い経験を通した試行錯誤」が必要不可欠ですが、「コツ」を知ることで、コミュニケーション能力を劇的に向上させることができます。
コミュニケーションの基本
■常に笑顔で接すること…
笑顔というのは人の心を癒すのに最も効果的な方法です。“もらい笑い”という言葉が存在するように、笑顔の人を見ると自然と心が穏やかになり、不安が取り除かれるだけでなく、前向きな考えに移行します。反対に、強張った表情や険悪な表情はマイナスの作用を相手に伝えてしまい、気分の低下や消極性を生み出してしまいます。それゆえ、常に笑顔で接することが大切です。
■穏やかな声で話すこと…
もらい笑顔と同様に、声の調子も相手に作用し、声が高いと快活、声が低いと陰鬱な印象を与えます。また、話すスピードが早いと興奮、話すスピードが遅いと冷静な印象を与えます。声が相手の耳に居心地よく入るよう、声の高低が丁度よい穏やかな調子で、ゆっくりと話すよう心掛けてください。
■親身になって傾聴すること…
親身になって傾聴することで、相手は「ちゃんと自分の話を聞いてくれている」と安心します。傾聴は患者情報の取得にも役立つため、多忙であっても可能な限り注意深く傾聴するようにしましょう。
■いかなる事にも冷静に…
人は仕草や表情の変化、声の調子などに敏感で、無意識的に反応します。患者さん本人や患者さんの周りで緊急を要する事態が発生した際に、慌てた行動をみせてしまうと、患者さんは不安な状態に陥ります。いかなる事、いかなる場面においても冷静に行動するよう心掛けてください。
■十分に説明をすること…
疾患や治療の方針など、患者さんに対して十分に説明することも非常に大切です。納得のいく説明がなければ、患者さんは医療従事者に対して不信感を抱き、不安はますます募ってしまいます。コミュニケーションを円滑に図るためにも、可能な範囲で十分に説明を行ってください。また、専門用語を多用せず、患者さんに分かりやすく説明することが大切です。
是非やってみるべきテクニック ≫
■目を見て話す…
時には威圧的にとられてしまうことがありますが、それは表情が強張っていたり、批判的な態度で接している場合のみです。通常、目を見て話すことで「話をちゃんと聞いていますよ」、「あなたに好感を持っていますよ」というように、好意シグナルが伝わります。特に社会的に権力を持つ人や高齢者の中には、“無礼”として、目を合わせないことに不快を感じる人がいます。笑顔に加えて、目を見て話すよう心掛けましょう。
■目線を同一にする…
日本語には「目上」「目下」という表現があるように、社会的にも心理的にも目の高さは上下関係を表しています。多くの人は受容していますが、中には上から話されることに不快を感じる人もいるため、出来るだけ目線を同じにして話すよう心掛けてください。ただし、何時も目線を同一にする必要はありません。車椅子の移乗を介助する時など、可能な時だけ意識的に行いましょう。
■距離を確保する…
人は無意識的にテリトリー(パーソナルスペース)形成しており、ある一定の範囲に他人が入ってくると不快を感じます。好感を持っているほど、信頼が厚いほど、この受容の距離は短いため、特に初対面の時には患者さんのパーソナルスペース内に入らないよう注意する必要があります。なお、人によって距離は異なりますが、1mくらいの距離は確保しておきましょう。
■相槌を打つ…
相槌は「話を聞いていますよ」というサインを相手に伝え、相手は心地よく自分の話をすることができます。相手の話に合わせて、「はい」「ええ」「そうなんですか」などと短い言葉で返しましょう。「ハイハイ」「うんうん」など、忙しい時にやりがちな小刻みな相槌は逆効果です。相手の話に合わせてゆっくり相槌を打つのがポイントです。
■オウム返しをする…
相手が言ったことをそのまま返すオウム返しは、「あなたの話を理解しています」という気持ちを伝えることができます。「今日は寒いわね」に対して「今日は本当に寒いですねー」というように繰り返しましょう。
ただし、多用しすぎると、逆効果になるため、要所要所で使うようにしてください。
■“オープンクエスション”を使う…
YESやNOまたはAかBかの択一でしか返答できない“クローズドクエスション”ではなく、「どう思いますか…?」「どうしてですか…?」「どうでしたか…?」のように相手が自由に返答できるオープンクエスションを使うことで、話しが長続きするだけでなく、相手は気持ちよく話すことができ満足度が格段に向上します。
■話すスピードを合わせる…
話すスピードは人によって大きく異なります。自分のスピードは最も居心地が良いもので、話すスピードが遅い人は相手に速く話されると不快を感じる時があります。また、早口は理解しにくいという一面もあります。話すスピードが早い人は相手に遅く話されてもそれほど不快を感じることはないため、特に話すスピードが遅い人には遅く話すよう心掛けてください。
■話題に同調する…
同調とは、いわゆる共感です。人は、共感の気持ちを示された相手に好感を抱きます。なんでもかんでも同調するのは考えものですが、同調できる話題に対しては「私も好きなんですよ…!」というように積極的に同調してみましょう。
■ボディランゲージを駆使する…
ボディランゲージは古くから会話の一つの手段として用いられてきました。人は動くものに無意識的に反応するため、ボディランゲージを用いることで、相手が自分に対してより興味を持つようになります。
■開放的な姿勢をとる…
人は無意識のうちに相手の姿勢に対して好感・嫌悪感を抱きます。腕を胸のあたりで組んだり、後ろで手を組んだり、いわゆる体の一部を隠す姿勢は防衛的・拒否的な印象を与えてしまいます。また、爪や手の平を隠す(手をグーにする)行為も、防衛的・拒否的な印象を与える可能性があるため、これらの行為には気をつけ、開放的な姿勢をとるよう心掛けましょう。
■初対面時には、必ずこちらから“あいさつ”と“自己紹介”を…!
人間関係において、“あいさつ”は基本中の基本です。これは、日常やビジネスだけでなく、医療従事者―患者間でも非常に大切です。また、第一印象は今後の信頼関係に大きく影響します。それゆえ、初診患者との初対面時にはドクター・スタッフが先に笑顔であいさつしてください。また、自己紹介も忘れてはなりません。社会的地位の高い人や高齢者の中には、稀に
自己紹介がないこと…、
先に名乗らないこと…
に対して、非常に不快に感じる人がいます。必ず、ドクター・スタッフの方から自己紹介をしてください。
以上、私(大山)が、診療所経営セミナー(患者満足度向上ための接遇の考え方)内で使用しているコンテンツの一部を紹介させていただきました。
患者さんの最大の不満の一つ、それは「待ち時間」です。
声に出して文句を言わない人も、対策をしていなければほぼ確実に「不満」を感じています。
そこで、待ち時間を「体感的に」短くする方法をご紹介します…!
どれも言われてみれば確かにその通りです。この法則でわかることは、「待ち時間」というのは、条件によって長くも感じるし短くも感じるということです。“繁盛診療所”での一番のクレーム要因ともいえる「待ち時間」も、この法則を知っていれば患者さんの「体感時間」を短くすることができます。そこで、マイスターの8つの法則を参考に、貴院でできる3つの「体感時間短縮法」をご紹介したいと思います。
マイスターの8つの法則
1.何もしていない時間は長く感じる
2.人はとにかく何かに取りかかりたい
3.不安があると、待ち時間は長く感じる
4.待ち時間が分からないと、長く感じる
5.理由もなく、待ちたくない
6.不平等な待ち時間は長く感じる
7.価値あるものに対する待ち時間には寛容になれる
8.独りの待ち時間は長く感じる
どれも経験がある人にとっては理解できる心理ではないでしょうか。この法則はビジネスシーンにも当てはめることができます。お客様がどのようなときに不満やイライラを募らせたり、どのような時間を長く感じるのかを想像してみることが重要です。
医療機関(開業医)の待ち時間対策について
複雑な「待ち時間対策」も分類すると整理しやすくなります。
時間
・「直接的 待ち時間対策」:待合室に滞在している時間そのものを短くしようとする発想
・「間接的 待ち時間対策」:待っている時間を様々な工夫で飽きさせないようにする対策
資源
・「人為的 待ち時間対策」:職員の患者さんへの声掛けの配慮等でストレス低減を図ろうとする考え
・「機械的 待ち時間対策」:予約システム、順番表示モニターなどの導入による新機軸
待ち時間に対する不満を分析し、まず上記4つのうちのどの要因から改善すればよいかを考えます。
「待ち時間対策」の限界
たとえば、とある医療機関で4時間かかっていた待ち時間を半分(2時間)に短縮せよという課題があったとします。
短絡的ですがすぐに思いつく方法は以下の3つしかありません。
・医師の数を倍に増やす
・患者を半分に減らす
・1人当たりの診療時間を半分に減らす…いずれも実現不可能な非現実的な話です。
・中待合室で上着を脱いでおいてもらう…、
・質問は紙に書いて持参してもらう…、
・スタッフは小走りで動く…、
・患者さんの長話は上手に切り上げる…
等の策もよく検討されますが、残念ながら思ったほどの効果は上がっていないのが現状です。(重要なことですが根本解決にいたるほどではないようです)
患者さんが多くて待ち時間が長い病院(診療所)は医療技術の高さを表していると言えます。しかし「患者さんに不便をかけない」ということは経営の大原則。今更ですが患者さんの不満のトップは「長い待ち時間」です。
とあるデータによると「病医院を変えた理由」の第5位は「待ち時間が長い」で約25%の方がそう答えています。
院長の診療所はそのような事態になりつつあるのでしょうか…? 傾向が見られるのでしょうか…?
また「待ち時間対策」の先手を打って競合時代に向かおうとされているのでしょうか…?
「あの医療機関はとてもいいけど、待ち時間が長過ぎて…」
「少し行けば待ち時間が短い医療機関があるから、今度からは…」
「この程度の症状なら空いている違う医療機関で診てもらっても…」
一度、他院に移った患者さんを再び呼び戻すことはほぼ無理です。
もしかすると今は『よく解らない…』『良案が浮かばない…』『当院の診療体制は複雑だから…』などの理由で
一歩踏み出せないでいるのでしょうか。
待ち時間は短縮できるのか…?
9:00の診察開始に合わせ8:30から受付を始める診療所があるとします。
開錠と共に外に並んで待っていた30人がやってきて順番に診察券を受付に出しました。
1人の診察に5分要すると仮定すると1番の患者さんは9:00に呼ばれ9:05に診察を終えます。
でも30番の患者さんは9:00から150分待つ計算になります。(本当はもっとかかることでしょう…)
受付した時点で2時間半の待ち時間が決定してしまいます。
「こんなに朝早くから並んだのにいつまで待たせるんだ…!」という不満が噴出するのはこのような患者さんたちです。
この30番の患者さんの不満を解消する戦術はお持ちですか…?
待ち時間とはどの時間なのか…?
待ち時間とは通常「医療機関に行って受付をしてから診察までの時間…」と認識します。
上記の例で言えば8:30に医療機関に入った1番の方の待ち時間は8:30から診察9:00までの30分。
30番の方は3時間(8:30〜11:30)となります。
1番の患者さんと30番の患者さんのストレスの違いは説明するまでもありません。
待ち時間を短縮するとは「院内滞在時間を短縮する」 と言うことです。
理想の診療風景
現実的にはあり得ない風景ですが、朝9:00に診察が始まります。
9:00直前に本日1人目の患者さんが来院しました。その方を診察中に2人目の患者さんがやってきて、1人目の診察が終わるとほとんど待つことなく診察室に呼ばれました。
その方を診察中に3人目の患者さんが…、そうしているうちに4人目が…、一日中、このようなタイミングで患者さんが来院するのが理想です。現実には困難なことですが、この流れを意識して「待ち時間対策」を考えることが基本です。
着目すべき視点
「窓口で受付をしなければならない…」に着目します。先の例で言うと同じ時間頃に来院しても少しの差で後ろの方は人数×5分で待ち時間が増加します。行ってみなければ解らない…。
医療機関に到着した時に誰もいなければ待ち時間はゼロ。先に10人いたら50分、20人待ちなら100分待ち…。
予想不可能な賭けにでるようなものです。そこで望まれることは、
・今、どのくらい混んでいるのか「ここ」で解るということ
・混んでいたらWEBで「ここ」で受付を済ませて「順番」や「時間」を確保する
・または診察終了後に次回の予約時間を決めてしまう
診療科や医療機関規模で「順番予約」「時間予約」のどちらを採用しどのように運用するかを検討します。
いずれにしても受付をしに行く必要がないので自分の診察の「順番」や「時間」の直前まで時間は自由。
即ち “ 「院内滞在時間の短縮」= 待ち時間対策 ” です。
「待ち時間」はなぜ不満なのか…?
「生産性」も「基準」も無い時間だからです。体調が悪い患者さんは、診察間際まで自宅や車の中で体を休めていたいはずです。待合室の椅子に座っているより時間を有効に使いたいと考えています。「生産性のない時間」に患者さんは強い不満を感じます。
次に患者さんは「いつ呼ばれるかわからないまま」漫然と待たされたくありません。
患者さんが多ければ「待ち時間も長い」のはわかっていますが、
「いまどのくらい…?」、
「あとどのくらい…?」という基準も無いまま待つことに不安と不満を感じます。
「待ち時間対策」を決意するか否か
・不満を抱えながらじっと耐えて待つ患者さん(時に不満爆発)。
・患者さんからの問合せ・クレーム、厳しい視線を浴びながら業務をこなすスタッフ。
・疲労感を露わにする患者さんにせかされるように診察する医師。
考えるとこの3つの苦悩は同じ空間で同じ時間に発生しています。「待ち時間対策」は、その空間にいる誰もが望んでいるにもかかわらず、いっこうに何かが改善されようとする気配を感じない。
それはいったいなぜなのでしょう…?
院長は、「するか」「しないか」を決断するだけです。
貴院でできる3つの「体感時間短縮法」の紹介
対策1:言い訳はちゃんとしましょう…!
◎マイスターの法則(No.5):理由もなく待ちたくない…
理由がわかると、イライラしてたはずが、簡単に気持ちが落ち着ついたりします。そこで大事なのが「言い訳」です。
つまり、遅れている理由をしっかり説明するのです。「言い訳するな…!」と子供の頃によく怒られたかもしれませんが、実は、待たせている時は言い訳をしたほうが効果的です…。ただし、言い訳の仕方も重要です。
「それなら仕方ないね…」と思ってもらえるような言い訳をしましょう。
【言い訳例】
「急な痛みを起こした患者さんが、何名か来られてしまって…」
↓
「今日は連休前なので患者さん多くて…」
↓
「今日は連休明けで患者さんが多くて…」
↓
「この時間はいつも混んでしまって…」
↓
「今日(スタッフ・代診の先生が)は風邪でスタッフが少なくて…」
対策2.:声がけで体感時間を短縮できる…!
◎マイスターの法則(No.3):不安があると、待ち時間は長く感じる
◎マイスターの法則(No.4):待ち時間が分からないと、長く感じる
◎マイスターの法則(No.8):独りの待ち時間は長く感じる
ただただ待ち続けていると、患者さんは…
・「忘れられているんじゃないだろうか…」
・「順番を飛ばされてしまったんじゃないだろうか…」
といった不安を感じることも少なくありません。
しかも、一度そういった不安を感じてしまうと、それが気になって余計に待ち時間を長く感じてしまいます。
そこで、次のような対処をしておきましょう。
・10~15分毎に声掛けをする…
・「あと何人くらい…」「あと何分くらい…」といった待ち時間を伝える
・ちょっとした雑談をする…
この様に、「あなたが待っている事を私達は認識している、そして、それを申し訳なく思っている…」ことをしっかり示しましょう。これだけでかなりの不安、不満が解消されます。もし、待ち時間が長い場合、もし外出してもよいのであれば、それをお伝えするのも患者さんに喜ばれます。そして、順番が来た時の「大変お待たせしました…」というスタッフの声掛け、さらに、チェア上でも院長が「おまたせして済みませんでした…」と一言声をかける。待ち時間が長かったとしても、こうして誠心誠意、対応することで患者さんが感激すれば、逆に「ファン」を作ることにもつながります。ピンチはチャンス…!の好例です。
対策3.:オーソドックスだけどハマれば強い
◆マイスターの法則(No.1):何もしていない時間は長く感じる
◆マイスターの法則(No.2):人はとにかく何かに取りかかりたい
患者さんの待ち時間は、まさに手持ぶさた。もちろんテレビを見たり、雑誌を読んだりするのもよいのですが、自分の手を動かして時間潰しすると更に体感時間が短く感じられます。
◆その1:iPad等タブレット端末の設置
最近の美容院では待ち時間用にiPadなどを設置しているところが増えてきています。診療所で置いている所はまだまだ少ないですが、無料でインストールできるアプリを事前に入れておいて、遊んでもらいましょう。
■静かなクレーマー
待ち時間が長くても、多くの患者さんはクレームも言わずに静かに待っています。しかしそれは、心が広いのではありません。不満を抱いていても、恥ずかしくて言えないだけ。ほとんどの方は、イライラしながらも、我慢をして待っているのです。
変わる病院・診療所の待ち時間対策 外出フリー、健康講座 “イライラ解消、感染防止にも…”
「あとどれぐらい待てば診察を受けられるのか…?」
ただでさえ具合の悪い時に、病院や診療所で長時間に渡って待たされ、さらに憂鬱になったことがある人は多いと思います。
もっと外来患者さんに気持ちよく診察を待ってもらえないか。工夫する動きが“病院・診療所”に広がりだしました。待合室から離れて過ごしたり、外出したり。付き添う家族たちのイライラも解消する、その工夫とは…?
ある病院では、待ち時間のイライラ解消のため、「寄り道講座」を開いています。
「まもなく『寄り道講座』を開催します。本日のテーマは『血液検査の豆知識・糖尿病の検査』です。
よかったらお立ち寄りください」。午前10時10分過ぎ、病院の1階正面玄関を入った奥のソファに中高年の外来患者さんたちがぞろぞろと集まってきました。総勢ざっと40人。同じフロアの内科や外科、整形外科、眼科などの前で順番を待っていた外来患者や付き添いの家族たちです。「神経内科で10時半の予約があるんですが、こっちに来ていても大丈夫ですか…?
70歳代の女性患者さんからの質問に看護師さんがすかさず答え、「神経内科ですね。順番が来たらお呼びしますよ…!」
ここの病院を訪れる外来患者さんは1日平均で1,000人を超えるそうです。午前中に来ても、診察が午後になることもあり、そこで待ち時間対策として昨年から、認定看護師や管理栄養士、放射線技師らによる疾病予防や健康増進の無料講座を月2回のペースで開催し始めたそうです。
足の痛みを感じ来院した76歳の女性患者さんは「血栓のことを分かりやすく解説してもらえた。何だか得した感じ。また受講したい」と感想を述べたり、週に3日来院している57歳の女性患者さんも「受講は今日で3回目。黙って待っていると長いけど、受講すると30分があっという間に過ぎる」と話していました。
できるところから始める待ち時間対策
患者さんが抱く医療機関への不満の中で常に上位を占めているもの、それが「長い待ち時間」。診療所を経営する側にしてみれば、「それだけその診療所が繁盛しているという証拠じゃないか…」と集患状況に満足してしまいそうですが、楽観視したまま対策をとらずにいると痛い目に合うことも…。何しろ現代人は仕事にプライベートに日々忙しいもの。特定の医師にしか治療できないような難病の類いならともかく、軽微な症状であれば待ち時間の短い診療所へとサッサと鞍替えしてしまうでしょう。
取り逃がす可能性があるのは多忙な患者さんだけではありません。待合室での2次感染を怖れる人たちも…、滞在時間の少なくてすむ診療所を選んで通うはず。それに、長い待ち時間を黙って過ごしてくれる患者さんばかりではないのです。
もしクレームが出ることになれば当然スタッフが対応せざるを得ないため、診療所の生産性はどんどん落ちていってしまいます。
できるところから始める待ち時間対策のイメージ
◆患者数の偏りを減らすためにできること
では、待ち時間を短くするにはどういう対策が考えられるでしょうか。院長が診療所を開業した際には、確実ながら人件費が重くのしかかってくる「スタッフ増員」という手段をとる前に、まずこれからお伝えするいくつかの対策法を試してみることをお薦めします。最近、多くの医療機関で採用されているのが、“患者数の偏りを減らす”(平準化する)ための工夫です。
開院中ずっと大幅な待ち時間が発生している場合は別ですが、混雑している時とそうでない時の差が大きい診療所にとっては特に効果的です。受付からのアナウンスや院内の掲示板などで空いている時間を知らせる方法もありますし、診察終了時に次回予約をするよう患者さんに促してみるのも良いでしょう。平準化をさらに推し進め効率を高めたいなら診療予約システムを導入し、時間帯ごとに患者数を細かく調整することも可能です。
◆「待つ」という行為のストレスを軽減する手も…
待ち時間を短くするばかりが対策ではありません。
極端な話、待っている時間がいくら長くとも、患者さんが不満に思わなければ良いのです。
そのための第一歩が「スタッフによる声かけ」です。一見単純に思えますが、これが意外に効果的です。
長い待ち時間にクレームをつける人の多くが、「どれだけ待てばいいのか分からない」ことに腹を立てるといいます。
彼らが激怒する前に、
「すみません、あと○分ぐらいお待ちいただけますか…?」、
「○○さんは○番目に診察予定です…」
などと伝えるようにするのです。
スタッフの労力をあまり割けない場合は、銀行などでおなじみの順番表示システムを導入しても良いでしょう。
また退屈しのぎのため待合室にテレビや雑誌・漫画を置いておくというのは以前からポピュラーな手法でしたが、最近ではPCやスマートフォンを無料でWi-Fi接続できる無線LANスポットの提供をしている診療所も。居心地よく過ごしてもらう工夫も、待ち時間対策の一つと心得ましょう。
患者の待ち時間を減らすには、どうすればよいか…?
「ラーメン屋がはやるかどうか…」は、味だけで決まるわけではありません。院長は、新規でラーメン屋に入るときに、そこの味は知らないはずです。では、なぜ、そのラーメン屋に入ろうと思いましたか…?
友達から教えてもらった、インターネットの「口コミ」で見たということもあるかもしれませんが、最も多い理由が、長い行列ができているからというものです。たくさんの人が並んでいると、自分も並んでみようかなと心理的な暗示にかかってしまいます。実際に、それだけ並んでいるのだから、おいしいはずだという先入観もできあがるため、味も高評価になりがちです。もちろん、ラーメン屋は、それを知っていて、わざわざ、店を大きくせずに、店の外に行列が作られるようにしているのです。
ただ、お客さんに店の外に並んでもらうのは、それだけの理由ではありません。実は、お客さんがお店に入り、座ってからの待ち時間が長いと、不満が高くなるのです。長時間、外で待っていても、お店に入ってからすぐに料理が運ばれてくると、不満が高くならないのです。
人間は、「待つ時間」というのが単純に長い、短いということではなく、“どの場所で待ったのか…”ということが、大きく感情に影響してくるのです。 これは、診療所経営・病院経営にも言えることです。
病院や診療所での患者さんの待ち時間が長いと、同じように不満が高くなります。ただ、ラーメン屋と同じように、外で待たせるわけにはいきません。風邪で体調が悪かったり、骨折して立てなかったりするからです。
そこで、「予約」という制度を使って、患者さんの待ち時間を短くしようとします。 「予約」とは、患者さんと「診察開始時間」を前もって、約束しておくことです。
ところが、患者さんが予約時間に行ったとしても、診察時間が押してしまったり、途中で急患が入ったりして、そこで1時間、2時間も待たされてしまうことがあります。これでは、予約制にしたことで、余計に患者の不満を増やしていることになります。それならば、来院した順番に、患者さんを診察する方法がよいのでしょうか。
そもそも、医院経営・病院経営の場合、駅近であったとしても、患者さんの容態が悪いため、自家用車で通院してくる患者さんが多くなります。 もし来院した順番に診察すると、駐車場が一杯になり、道路側にはみ出して止めて、空くのを待つことになります。これも、不満の1つになるのです。
予約もだめ、来院順もダメという場合には、その日の電話で診察の順番を決める方法をお勧めします。
患者さんは、電話することで、診察の順番を知り、その診察時間を教えてもらいます。そして、来院する前に、もう一度、電話をして、診察時間を確認するのです。これならば、患者さんは、自宅で待つことができ、病院・診療所での待ち時間が少なくなり、不満が増えません。
この時、順番取り・診察時間の確認には、専用の電話番号で対応すると、診療所の経営としてもスムーズに対応できます。また、インターネットによる予約システムを導入していることもありますが、患者さんの年齢層が高いと、使えずに、苦情になることがあります。
ということで、「インターネット」と「電話予約」の2つを導入してしまう診療所や病院がありますが、それは、止めましょう。診療所経営の指示が混乱しがちになり、万が一間違った診察時間を患者さんに伝えたりすると、不満が増えてしまいます。患者さんがどちらも使えるようにと、わざわざ、コストをかけて導入したことが逆に分かりづらくなってしまっているのです。
システムはシンプルにすることで、運用する受付の事務員も看護師も間違わなくなります。
ここでは、電話による診察時間の予約の実例を挙げておきますので、参考にしてください。
なお、この診療所の診察時間は9時からです。
(1)
診察開始の30分前から、専用電話による予約を取り始めますが、診察時間は10時半からとして、受付順番、名前、診察内容、伝えた診察時間を一覧にしておく
(2)
9時から30分間は、来院順に、受付順番、名前、診察内容を一覧表に書き入れる
(3)
9時半以降に、電話で予約せずに来院した患者さんも、一覧表に書き入れていくが、10時半以降の電話予約の患者さんが多い場合には、午後の診察時間になることを了承してもらう
(4)
そのあと、専用電話にかかってきた患者さんも、一覧表に加えると同時に、午後の診察時間を伝えて、それも書き入れておく
(5)
11時を過ぎた段階で、予想した診察時間を見直して、30分以上、ズレこんでいたら、赤ペンで、それ以降の診察時間を修正しておく、この段階で、午前中の診察が午後に変更になる患者さんには、電話して了承してもらう
(6)
専用電話に、診察時間の確認の電話がかかってきたら、名前を確認して、赤ペンで書いた診察時間を伝える
(7)
午後には、もう一度、診察時間を見直して、今度は青ペンで診察時間を修正する
上記の実例はあくまで、1つの例なので、自分の診療所に合うように、修正してみてください。なお、新規開業の時から、これらの予約や電話での順番取りの方法を導入するのは止めてください。
最初に、ラーメン屋の事例を挙げましたが、同じように、いつでもガラガラで、待ち時間がゼロでは、患者さんに「この病院大丈夫かな…?」という感情を持たせてしまいます。診療所経営では、適度な待ち時間というのも必要になります。 そのため、患者数が多くなり、朝一番で来る患者さん以外の待ち時間が30以上になった時が、導入の目安となります。
また、新規の患者さんが多い内科診療所であれば、午前中の新患が5人以上では、電話での予約取りを知らずに来院した新患を待たせすぎてしまい、不満を増やしてしまうこともあります。 このような場合には、最初から新患が多いことを予想して、専用電話で順番取りの診察時間を詰めずに、少し時間を開けるようにしてください。
そうすれば、新患をその間に入れることができるので、スムーズな診察を行うことができます。
新患に対しては、最初のイメージが重要です。
特に、内科などは、風邪で何度も通院しないため、1回目で待ち時間が長い、新患には不親切という不満を与えてしまうと、2回目以降の来院を望めなくなってしまいます。これは、今までは新患は少なくても、周りに分譲マンションや一戸建ての分譲住宅ができて、将来、増えていくこともあります。
どの様な方法で来院した患者さんに対しても、“ちょうどよい待ち時間”が保てるように、柔軟に、システムを修正していきましょう。なお、適度な待ち時間を作ることで、患者さんとコミュニケーションを取ることができます。