院長の困りごと 4

開業して数年になるが一日あたりの平均来院患者数が
30人をなかなか超えなく 今後の資金繰りが心配!

【1】スマホを持たない高齢の患者さんに「院内報」や「ハガキ」でアプローチ

増患対策には、より多くの患者さんに診療所を知ってもらうこと、アプローチしていくことが大切です。
ここでは、調査結果にもとづき、高齢の患者さんに有効なアプローチ方法をレポートします。

●高齢者の増加は安定経営につながらない…通院頻度は減少している現状。少子高齢化が進む日本。
2025年には、65歳以上の人口割合が2015年の26.8%から30.3%に増加し、日本人の約3人に1人は高齢者になります。社会医療診療行為別調査によると、外来患者の実数は1999年から2015年までは年平均2.4%の伸びを示していることから、高齢化に伴い医療の需要は年を追うごとに増しているといえます。

そのため、開業医の院長のなかには、高齢化によって患者さん全体の数が増えているのだから、診療所経営も安泰だとお考えの方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、一方でこんな2つのデータがあります。先ほど紹介した社会医療診療行為別調査では、同時に診療所にかかる“外来患者の延べ数”は2002年から2010年まで減少傾向であり、それ以降は盛り返しているものの、平均成長率は+0.3%とほぼ横ばいなのです。

そして、患者1人あたりの1カ月の平均来院頻度は、1999年は平均2.3回/月だったのに対し、2015年には1.6回/月と減少しています。つまり、高齢者数は確実に増えているにも関わらず、患者一人あたりの通院数が減少傾向にあるため、延べ人数は横ばい状態にある、ということがいえます。患者さんの絶対数は増えているのに、患者さんの来院回数が減っている原因としては、医療費の自己負担額の増加、さらに処方日数制限が緩和されたことなどが影響していると考えられます。

そのため、診療所経営を安定させるには、少子高齢化といった社会情勢の変化に頼るのではなく、診療所側から地域住民へ積極的にアプローチしていくことが重要となります。

高齢患者の情報収集はインターネットよりも「口コミ」や「チラシ」が有効

インターネットの全盛期である今、多くの診療所で採用されているのがインターネット上での「宣伝」および「口コミ」です。

インターネットは、幅広い世代に浸透しているため、ネット上で有効な広告活動を行うことは周知してもらうための重要な手段です。しかし、インターネットでは十分な集患を見込めない年齢層があります。
それが、高齢者です。

総務省の2017年度(平成29年度)情報通信白書によると、13歳から59歳までのインターネット使用率は90%を超えている一方、60歳代前半で約80%、60歳代後半で約70%と右肩下がりとなり、70歳代では、約50%、80歳代以降では約20%と半数以下という結果がでています。

一方、少し古い資料となりますが、2016年に厚生労働省が提示した資料によると、外来患者のうち75歳以上の高齢者の増加率は約1.5倍と、ほかの年齢層にくらべて大きな伸び率となっています。

これら2つの調査結果からいえることは、インターネット上でいくら宣伝活動を充実させても、今後さらに増加すると考えられる“高齢患者”には、効果が期待できないということです。
では、インターネットを使わない高齢者は、普段どういったところから情報を入手しているのでしょうか。

2014年度、内閣府の高齢者の日常生活に関する意識調査結果によると、高齢者の情報源はテレビやタウン誌を含む新聞、家族、友人・近所の人、チラシや折り込みを含むダイレクトメール、インターネットという順でした。
つまり、インターネットよりも友人や近所の人、チラシや折り込み広告を含むダイレクトメールの方が、大きな情報源になっているのです。

よって高齢者に対して行うべき対策は、インターネットでの宣伝強化ではなく、友人や近所の人への「口コミ」、さらに「チラシ」や「折り込み広告」といったアナログ的な宣伝であるといえます。

高齢患者へのアプローチ。送る「ハガキ」と「手渡しする“紹介カード・院内報”

では、高齢者の情報源へアプローチするためには、どういった宣伝方法を展開すればよいのでしょうか。
その方法を3つ、紹介します。

初診後通院していない患者さんへハガキを送る

アプローチというと、つい初診患者さんだけがターゲットだと捉えてしまいがちです。しかし、経営をより安定させるために重要なのは、初診以降継続して通院される患者さんです。よって、初診以降来院されていない高齢患者さんに対しては、有効な手段となる「お知らせのハガキ」を送りましょう。ハガキなら高齢患者さんの手元に残るため、ダイレクトに診療所をアピールすることができます。また、ハガキという「残るもの」にすることで、ご本人が友人や近所の人に見せたり、同じハガキを受け取った人と共通の話題で話がはずみ、口コミにつながるといったメリットもあります。

受付側にて「紹介カード」を配布する

上述したように、高齢者は「家族」や「友人・近所の人」からの評判を情報源としている割合が高くなっています。そこで、一度来院した患者さんが家族や友人に口コミを広げてくれるように、受付側から直接「紹介カード」を配布するのも効果的です。

この紹介カードとは、洋服店や飲食店のレジ横にある“ショップカード”を診療所用にアレンジしたものです。名刺サイズのカードに、診療所の名前や診療時間、電話番号のほかに、理念や特長などを見やすく印字しておくことで、患者さんが診療所の話題を出しやすくなり、その結果、診療所の口コミが広がっていくことが大いに期待できます。また、この紹介カードは診療所だけでなく、お年寄りが集まる地域の集会所などにも置いてもらえば、なかなか病院に足が向かないというお年寄りの目にも、触れやすくなります。

院内報を発行し、お年寄りに「お持ち帰りいただく…」

「口コミ」を広める方法として、ハガキや紹介カードとともに導入したいのが「院内報」です。この院内報は、いわば院内で発行している新聞で、季節ごとの疾患やその解説などを載せることが多いのです。
高齢者同士の会話のなかに疾患の話題がでた際、その解説が載せてあれば読み進めてもらえるので、診療所の存在も同時にアピールすることができるのです。また、スタッフのコラムなども掲載しておくと、来院された患者さんに診療所そのものに対しての関心を持ってもらうこともできるでしょう。

実際に、院内報を発行したことで初診の方がその院内報を片手に来院した、というケースもあるため、高齢患者さんへの広告効果としては、インターネット以上の反響が期待できるのではないでしょうか。

【2】患者さんに継続して受診してもらうにはどうすればよいでしょうか…?

患者さんに継続して受診してもらうためには、価値を感じて満足してもらうことが重要です。
診療所の院長やスタッフの方々は、良い医療を提供し、院内環境を整え、接遇技術を磨き、患者さんの満足を得ることに日々努力されていることと思います。

これらのことを日々継続することは不可欠ですが、それ以外にも重要なことがあります。
それは、「自院にマッチする患者さんに来ていただく…」ということを意識して行動することです。
では、どうすれば自院にマッチする患者さんに来てもらえるのか…?

患者さんが診療所に来院しても、事前に抱いていたイメージと実態とが異なっていると、患者さんは満足できないどころか不満を抱いてしまいます。診療所を受診する患者さんの行動は、一般の商品やサービスの購入者の行動と同じです。人は、
「認知→試用→利用」という流れで行動します。

スーパーの試食コーナーを例にとると、まず通りかかった人は試食の説明を聞いて「こんな味なのかな…?」とイメージします(認知)。次に試食をしてみて(試用)、予想通りの味であれば満足して購入します。満足度が高ければ繰り返し購入します(利用)。予想と違えば購入することはありません。

患者さんもこれと同じように行動します。“ホームページ”などで診療所を知り、「こんな診療所かな…?」とイメージして(認知)、受診します(試用)。そして、自分が思った通りであれば、満足して次からもその診療所を受診します(利用)。予想と違えば次からは受診しません。

よく内科開業医から聴く“ワクチン接種のみ”“単なる風邪”などと軽くみないで、患者さんが診療所を評価している“ということを肝に銘じて患者さんに向き合うことが大事です。最初に患者さんが想像する診療所のイメージと実際に受診した際の実態”が、マッチしているような”診療所運営“が必須です。満足すれば、「良い口コミ」をしてくれるかもしれませんが、そうでなければ、次からは受診しないばかりか「悪い口コミ」をされることにもなりかねないからです。
では、どうすれば自院にマッチする患者さんに来てもらえるのでしょうか…?

まず、自院の実態を正しく患者さんに伝えて認知してもらうことが必要です。当たり前ですが、過大広告や事実と異なることを伝えてはいけません。伝える内容は院長の経歴や専門分野、診療科目や診療内容・診療方針、医療機器や設備など数多くありますが、それだけでは十分とはいえません。患者さんは、これらのこと以外にも以下のようなことを知りたいと思っています。

・ドクター(先生)はどんな人なのだろうか…? 優しいのかな…? 怖いのかな…?
・スタッフの人たちはどんな雰囲気なんだろう…?
・この診療所は、自分とフィーリングが合うのだろうか…?

患者さんは、「院長やスタッフの人柄」、「診療所の雰囲気」など、目に見えないことを基準に選んでいるケースが多いようです。
それらのことを患者さんにわかりやすく伝えてあげることが大切です。

【3】内科診療所が「集患」を成功させるための大切なポイント

内科診療所の「集患」を成功させるポイント

現在日本では、約64,000軒の診療所が「内科」を標榜しています。
これはコンビニの数(全国に約56,000軒)より多く、患者さんからすると自宅からの徒歩圏内に複数件の内科診療所が存在しているような状況であり、ちょっとした体調不良や風邪などでは、最寄りの内科診療所にかかることが殆どでしょう。このような場合「集患」において重要になるポイントは、自宅や職場からの近さ、などといった“立地”になります。

ただし、この様な患者さんは継続して通ってくれるわけではなく症状が改善すれば通院しなくなるため、診療所経営の安定化という面でみると“不確定な患者さん”となります。

外来患者さんがこういった患者さんだけで構成されている内科診療所は、季節要因や気候要因に大きく左右され、経営基盤が不安定になっているケースがよく見受けられます。ここで気を付けていただきたいのは、貴院が近隣の内科診療所と比較した時何らかの“差別化”ができていないと、そういった「徒歩圏内の…」「ちょっとした体調不良の患者さん…」が、自院から徒歩数分圏内からしか来院してくれていない、という状況になってしまう、ということです。

逆に言うと、この“差別化”をしっかりとすることで、
「院長の診療所だから通院する…」という状態を作り出すことができます。

つまり、“集患”のポイントは“差別化”です。
またそういった患者さんは、疾患にもよりますが基本的に継続して通院してくれるため、診療所経営の安定化という面でも非常に大切な患者さんです。
では、内科診療所において“差別化”は、どのような観点で考えれば良いのでしょうか

弊社OFPには、差別化を考える時のポイントとして、“差別化の8要素”という考え方を採用しています。
“差別化の8要素”とは、他院と差別化を図るために意識すべき以下の8つの要素のことです。

1.立地:
2.規模:
3.ストアロイヤリティ:
4.商品力:
5.販促力:
6.接客力:
7.価格力:
8.固定客化力:

となっており、この順番は重要度も表しています。この中で、1~3戦略的差別化と呼びます。
ここに関してはすぐには変えることのできない、長期的な視点で戦略的に考えていく必要のある要素です。
そして4~8戦術的差別化と呼びます。こちらについては、企業努力によって変えることができる要素です。

これを“内科診療所”に当てはめると、

1.立地⇒ 診療所の利便性(駅からの近さ、駐車場の有無など)
2.規模⇒ 医師の数、スタッフの数、医院の広さ
3.ストアロイヤリティ⇒ 開院からの年月、院長・診療所の認知度
4.商品力⇒ 対応できる疾患、提供できる治療内容
5.販促力⇒ 各種広告、ホームページ、院内販促
6.接客力⇒ スタッフの接遇、診療時における説明の充実度
7.価格力⇒ 不必要な検査などにより、他院よりも極端に点数が高くなっていないか
8.固定客化力⇒ 一度きりでなく、またかかりたいと思ってもらえるサービス(治療、接遇)が提供できているか

医療業界(診療所)の場合、一概に一般企業と同じ考え方とはなりませんが、おおむね上記の通りでご認識いただけるかと思います。

1~3の要素については、すぐに改善できるものではありませんので、集患対策としてぜひ力を入れていただきたいのが、
4.商品力⇒ 対応できる疾患、提供できる治療内容
の部分です。一言で内科といっても、院長は開業されるまでの間、消化器や循環器、呼吸器など、様々な分野を専門的に診られていたことが多いかと思います。

つまり、「ちょっとした体調不良」を診るだけでなく、「特にこの疾患においては専門的に診ます」ということをしっかりとアピールすることで、「専門の先生に診てもらいたい」というニーズから、遠いところからも患者さんが来院してくれる“差別化”のポイントとなり、結果、集患力が高まるのです。

上手な集客・集患のためにどのような広告を活用するか…?
内科診療所における集客・集患のための広告、と聞くと、どのような媒体が思い浮かぶでしょうか…?

開業した当初は駅の看板やタウンページなどに広告を掲載される場合も多いでしょう。

また厳密には広告とは異なりますが、最近では開業に合わせてホームページを立ち上げ、事前に公開される内科診療所も多く見受けられます。それぞれの広告媒体には、それぞれの強みがあります。

開業したてで自院の存在があまり地域に知られておらず、まずは周辺地域に周知をしたいという段階では、看板広告やタウンページなどの地域に根ざした広告媒体を使うことで認知度を高められることから、足元の診療圏からの集客・集患が期待できます。

ところが開業して数年が経過すると、地域での認知度はだんだん高まっていきますが、それだけでは「ちょっとした体調不良の患者さん」が徒歩圏内から来院してくれるだけです。やはり物理的にスペースに制限のある広告媒体では、“差別化”ポイントである院長の専門性を充分にアピールすることは難しいでしょう。

この段階になると、ホームページを主軸としたwebを用いた宣伝(広告を含む)媒体を上手に活用することで、戦略的にターゲットとすべき患者さんを多方面から集患する診療圏を拡大していくための施策が必要です。

つまり内科診療所の「集患」にとって有効な広告とは何かを考えた時、開業してからの年数や実際に来院されている患者さんの層(疾患や年齢)、本当に診ていきたい患者さんの層などにより、最適な媒体は異なってきます。しかし足元の診療圏からある程度の患者さんが来院してくれていて、更に発展していく内科診療所を目指したい、あるいはこの地で長く診療を続けたい、という先生は次の段階として、ホームページを主軸としたweb媒体の宣伝(広告)手法を上手に活用し、いかに“差別化”ポイントである専門性をアピールしていくか、ということが重要になります。

ホームページによる集客・集患のポイント

一般の患者さんを対象としたアンケート結果では、初めての医療機関にかかる際、その医療機関のホームページを確認すると答えられた方は実に半数に上ります。これは、患者さんが自身の置かれた状況(地域、通院できる曜日・時間、症状、悩みなど)に対し、自身にとって最も適切な医療機関を“比較検討している”と言えます。

つまりホームページの内容を考える時に気を付けておきたいポイントは、様々な悩みを持った患者さんに対し、いかに適切な情報発信ができているか、悩みに対する回答ができているか、ということです。

競合他院と差別化できる要素はここにあります。つまり院長が専門として特に力を入れて取り組んできた「分野」や「疾患」について、診断方法・治療方法などの情報を、ホームページを用いて発信することにより、その疾患や症状について困っていた患者さんに対して明確に訴求ができ、その結果として、“専門のドクターに診てもらいたい”というニーズを持っている患者さんが遠方からでも院長の診療所を選んで来院してくれる、という“集患力”につながります。

勿論、ホームページは作るだけでなく多くの“見込み患者さん”に見てもらわなければならないため、そのための対策としてSEO対策や検索キーワード連動型広告なども上手く組み合わせながら取り組むことで、相乗効果を得ることができます。

以上、“内科診療所が「集患」を成功させる方法”について、

他院との差別化こそが集患の最重要ポイントであること、

また、その差別化要素を発信するための手法についてお伝えさせていただきました。
院長の診療所が競合他院と比べて“差別化”できているか、一度振り返る機会としていただければ幸いです。

医業経営支援・売り上げアップコーチングオフィス OFPコンサルタント合同会社 代表社員 大山隆男

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