もっと、スタッフのモチベーションが上がる
「マネジメント術」の方法を知りたい…
【1】診療所スタッフの“モチベーションアップ方法”とは…
現在は、人材採用困難時代ですので、そんな中で「人材」ではなく「人財」を採用しようとすれば、宝の山から更に貴重なお宝を見つけるくらい困難を伴います。出来るだけ応募数を増やそうと求人案内に出している給与額を上げる診療所も多いと思いますが、その上でくれぐれも注意しなければならないのは、
先輩スタッフよりも新人スタッフの方が給与が高いという状態を回避するということです。
応募条件を変えるのであれば、必然的に既存スタッフの条件も見直す必要があります。それを怠ると、ほぼ100パーセントの確率で、
「なんで私よりも、後に入ってきた●●さんの方が給与が高いの…?」
「私よりも分かること出来ることが少ないのに、それはおかしいでしょ…?」
「仕事を教えている私よりも、教わっている●●さんの方が給与が高いって、
「院長は何を考えているの…?」
と、院長に対して大きな不信感を持ちます。かつて弊社のクライアント様も給与を見直したことがあり、その際は、全スタッフの給与額を上げていただきました。このケースは、「応募が無いから」という理由ではなく、「更に質の高い仕事をして欲しいから…」という思いで給与改定しました。仕事をする理由や目的がお金だけなのは寂しいですが、しかし誰もがお金や生活のために仕事をしていることも、また事実です。お金に対する不信感は、即、退職に繋がりかねませんので、くれぐれもご注意下さい。
スタッフの話を遮らない
これは院長に限らず、看護師長などリーダースタッフなどにも言えることですが「スタッフの話を遮らず、最後まで聴く…」というのは、スタッフのモチベーションを下げないためには、とっても大切です。以前も、弊社クライアント先における、スタッフとの個人面談の中で、ある先輩スタッフとの関わり方について悩んでいる方がいらっしゃって、「もし私がその先輩スタッフだとして『私(先輩スタッフ)はあなたに対して、まずどんなことを気を付けたら良い…?』と聞かれたら、何とお答えしますか…?」と、お尋ねしたら、まさに「私(ある先輩スタッフに対して悩んでいるスタッフ)が話をしている途中で、話を遮らないで欲しい…」と声を上げていました。
基本的には誰もが自分の考えや思いを持っていますので「自分の考えは正しい…」と思っています(もちろん、私もそう思っています)。人の数と同じ正義の形があるのですから、相手の話を聴く際は、「まず相手の話を最後まで聴く」という姿勢が、非常に大切です。
これは、院長がスタッフに対して実施する“定期個人面談”でも同様で。そもそも診療だけでも忙しいのに、定期的に面談をされる姿勢自体がとても素晴らしいのですが、スタッフの話を「いや、だからね…」と遮るのは良くないです。そもそもスタッフとの個人面談で得たい結果のひとつは、「院長がしっかり私の話を聴いてくれた…」と、スタッフが感じることです。話を遮ることで「結局、ほとんどの時間、院長が話をしていたな…!」「こんな面談ならもうやりたくない…!」などと面談に対してマイナスな印象を持たれる可能性が高いです。くれぐれもご注意下さい。
交流会の必須アイテムとは
多ければ3か月に1回、せめて半年に1回は飲み(食事)会を実施する事は、良いチームを作る上でとても大切です。
忘年会や新年会、開業●周年記念日や、スタッフの歓送迎のタイミングで、交流会を実施して下さい。
さて、この交流会において必須アイテムがあります。それはカメラ(スマホ)です。
言うまでもなく、“院内交流会の様子を写真に収めるため”です。では、その交流会の写真を何に使うのかと言うと、ホームページの求人ページや学校に学生向けに置かせてもらう求人パンフレットなどにその写真を使う事で、「当院はプロフェッショナルとして高い技術と多くの知識を求められる厳しい職場ですが、仕事を離れたらこのように和気あいあいと、院長、スタッフで交流を図る機会があります…」というメッセージを“求人ページ”を見た人に伝える事を目的にしています。
ですので、交流会の写真は、院長もスタッフも真顔で写っていたり、あまりにも泥酔していて乱れていたりなどではなく、最高の笑顔で写っていたり、何人かでピースサインなどのポーズを取って写っている写真がベスト。
尚、このような写真を何枚か撮るために、交流会当日は「カメラ係」を決めておいておいた方が良いです。
定期的に交流会を開催する
「診療時間」とは「診療をする時間」ですので、院長を含むスタッフ同士の会話の内容の殆どは、診療に関するものになります。では、診療以外の内容の会話はいつするのかと言うと、「そんなの無い…」または「診療時間外にちょっと…」という診療所が多いのではないでしょうか。現実的にそれは仕方がありません。スタッフにしても「仕事が終わったら、さっさと帰りたい…」が本音でしょうし、そんな中で、院長が「ところでさ…」と世間話を始める事で、テンションが下がる事はあっても、上がる事は決してありません。
しかし、「飲ミニケーション」という言葉があるように、診療以外の時間や場所で、スタッフみんなとのコミュニケーションを取るのはそれはそれで大切です。ですので、多ければ3か月に1回程度、せめて半年に1回は院長、スタッフで食事(飲み)会(以下、交流会)を開く事をお勧めします。ちなみにこの交流会ですが、遅くても1か月前には告知した方が良いです。ある日突然「今日、皆で食事しようか…」と言われるのは用事がある場合が殆どですし、元々そういう予定(モード)では無い中で、そんな事を提案されても、嫌がられるだけです。「何月何日の何時から何時まで、どのお店で交流会をするのか…」という事を、1か月前には告知する事をお勧めします。
次に、これはある程度、大人数(10人以上)の診療所である事が前提ですが、席の配置は、“くじ引き”がお勧めです。
そうしないと、診療所内でも交流のある者同士や勤務年数や年齢が近い者同士が、交流会でも隣合わせになり診療所外での交流会をする意味が半減します。院長主催の交流会は、普段あまりコミュニケーションを取らない他職種や、年齢差があるスタッフ同士で交流を図るからこそ、やる価値があるのです。
尚、新人歓迎会の場合には「○○さん(新人)に質問したいこと」を予め院長、既存スタッフから集めておき、当日は、そこから選ばれた質問に新人スタッフに答えてもらう形にすると、新人を巻き込んだ会になりますのでお勧めです。逆に言えば、その様にしないと、元々交流があるスタッフ同士で会話が盛り上がり、気が付いたら、新人がポツンとしていた、なんて事になりかねず、そうなると何のための新人歓迎会なのかという事ですのでくれぐれも注意して下さい。
院長のモチベーション=スタッフのモチベーション
経営者とスタッフ、一般的に考えれば仕事に対して意識が高いのも、職場に対しての当事者意識が強いのも経営者です。
それは勿論、診療所においても例外ではありません。基本的に院長のモチベーション以上にスタッフが上がる事はありません。
だとすると、スタッフの仕事に対してのモチベーションを上げるためには、まずは院長自身がモチベーションを上げる事が不可欠です。院長が、朝、寝坊をしてきて、診療が始まるのが遅くなったり、予約表を見て「こんなに予約入っているのかぁ…」という姿を見て、スタッフのモチベーションが上がる事は決して無いのです。もちろん私も時には疲れていたり、やる気が減少する事もありますので、“経営者の背中をスタッフはよく見ている”のだという事を忘れてはいけません。
「どうしたら、それが出来るか?」を考える環境を作る
これは私自身もそうですが、多くの人は変化を嫌います。「こっちの方が良いかな…?」と、別の方法を思い付いても、
まぁ、でも別に困っていないから…
忙しいから、また今度にしよう…
これだけお金がかかるんじゃ無理かな…
スタッフが少ないから、今は無理かな…
など、出来ない理由、やらない理由を挙げて、変化せず現状を維持しようとします。しかし、これから3年後、5年後、10年後の単位で考えた時に、現状維持が如何に衰退の道を進んでいく事になるのかは、誰でも簡単に予想出来る事です。
しかし、殆どの人々が変化を恐れている…そのような矛盾の中で大切なのは、常日頃から「変化の重要性」や「やらない理由を挙げるのではなく、”どうしたらそれが出来るのか”を考える事が大切…」という事を、院長が伝え続ける事です。
それによって、スタッフ同士で、下記のようなメッセージを伝え合う診療所が次第に創られていきます。
スタッフが自主的に意見や改善を出してくるようになるにはどうしたら…
「スタッフ自ら意見を出したり行動して欲しい…」と思いながらも、スタッフはそのような行動をしてくれない…という診療所は多くあります。もちろんそのスタッフ自身のやる気の問題もありますが、院長がやる気を殺いでしまっている場合も多々あります。
例えば”口では任せると言いながら、何でもかんでも口を出してくる…”と、スタッフに思われてしまうと、スタッフが自主的に発言したり、提案してくる事はかなり難しいです。
仮に院長の中で「何でそんな発想するんだ…? ちょっと考えれば分かることだろ…!」と思われる内容を提案したり、実践したとしても、それをそのまま伝えてしまうと、本来得たかった「スタッフ自ら意見を出したり行動して欲しい」という結果が得られなくなってしまいます。そのような事が起きないためにも「こういう点は凄く良いね。でも、ここをもっとこうすると、更に良くなると思うよ…」という姿勢である事が大切です。スタッフに任せられないと、何でもかんでも院長がやらなくてはならなくなり、時間がいくらあっても足りなくなります。ぜひ「任せ上手」になって下さい…!
スタッフが自主的に意見や改善を出してくるようになるには
「うちのスタッフも、自分からどんどん提案してくれるようになってくれたらなぁ…」
このように思う院長はとても多いです。では、どうすれば、この様に「院長が色々と指示をしなくても、自主的に考え、行動するスタッフ」に育つのでしょうか…?
ある程度の“信頼関係が作られている”事が前提ですが、そうなる大きな要因は「スタッフからの意見や提案を”出来るだけ早く”実現してあげる…」という事です。スタッフから意見が出た際「ありがとう。じゃあ、考えておくから…」と言ったっきり、そのままにしてしまうと、スタッフは「私の意見はどうなったのかな…? どうして、その後、何にも言ってくれないんだろう…?
もしかして、院長を嫌な気持ちにさせてしまったのかな…」と心配になり、その後、何も言ってこなくなるという事が診療所では往々にしてあります。
そうなると、意見を出したスタッフがスタッフルームで「私、院長にこういう提案したんだけど、その後、何の反応も無くてさ、どうして何も言ってこないの…!?」という疑問を投げかけたら、それを聞いていた他のスタッフが「意見を出してもそうなるんだったら、言うの止めよう…」という気持ちになる可能性が非常に高いです。
院長は、医師業務だけでなくその他、多くの業務に追われていますので忘れてしまう事も致し方ない部分もありますが、スタッフから色々と意見や提案が出るような診療所創りのためには「スタッフからの意見や提案を”出来るだけ早く”で実現してあげる…」という事が不可欠ですので、ぜひ実施して下さい。
スタッフの誕生日を盛大にお祝いしよう…
先日、定期訪問でお伺いしたクライアントの内科診療所で、ちょうどスタッフの誕生日で、お昼にお祝いをされていました。
このような可愛らしいケーキでお祝いされているスタッフ様の嬉しそうな表情を拝見出来て、私もとっても幸せな気持ちになりました。
まず診療所で誕生日をしっかり把握されていて、このようにお祝いされる事に、このクライアントの雰囲気の良さ、チーム力が伝わってきます。
あとは、院長をはじめ、スタッフ一同からお祝いの言葉と
「あなたと働けて良かった…」というメッセージが込められた色紙を用意し、それを単に渡すだけでなく、その場で、ひとりひとり読み上げる形も、とても良い雰囲気になりますのでオススメです。ぜひやってみて下さい!
「挨拶」がモチベーションを下げる…
弊社は「スタッフを診療所経営に巻き込むコンサルティング…」をご提供しているため、スタッフの方と20~30分程度の個人面談を実施しています。そこでは「現在、仕事をしていて悩んでいる事や困っている事はありませんか…?」と質問しますが、
そこで意外に多いのが、
「朝、院長に挨拶した時に、ちゃんと挨拶を返してくれません…無視されました…!!」
「朝の院長に挨拶した時のリアクションで、院長の今日の機嫌を判断しています…」
「院長、今日は朝、ちゃんと挨拶を返してくれるかな…? と思いながら、通勤しています」
という「院長の朝の挨拶」についてのお悩みです。
“スタッフのモチベーションを上げる”には、何か特別な取組みやノウハウだけでなく、この様な日々の行動こそが大切なのだという事が、ここからよく分かります。
理想的には、ひとりひとりのスタッフに「〇〇さん、おはようございます…!」と、名前を添えて元気に挨拶する事ですが、それは結構ハードルが高いですので、せめてスタッフひとりひとりの眼を見て、「おはよう(ございます)…!」と、元気よく挨拶する事が大切です。
※「人財」であるスタッフに対して院長が“無視”をするドクターが多いのも問題です。
“無視”は「イジメ」と同類…! 下手すると“労基に駆け込んで訴えられる”ことも…
診療所開業後は、スタッフを集めて定期的にミーティングを行うことが大切です。
「子供の送り迎えの時間なので…」「なかなか時間がとれない…」などといったスタッフの要望に応えすぎて、“十分なミーティングを行っていない”診療所は少なくありません。ここでは“定期的なミーティングがいかに重要”かについて説明します。
なぜ“院内ミーティング”が必要なのか…?
院内ミーティングは、“診療所の価値観や目的意識を共有する場所”です。
院内ミーティングの第一の目的は、「院長とスタッフが一丸となって、どの様な診療所を作っていきたいかを語り合うこと」です。同じ診療所で働いていたとしても一人一人の価値観は違うもの。ミーティングをしないまま診療所の営業をしていると次第に組織としての一体感がなくなり、患者さんからの苦情が増えるなど様々な場所で問題が出てきてしまいます。何かあった時にだけ集まるのでは、充分なミーティングをしているとは言えません。
日頃からミーティングをし、意見を出し合う場を設けることで、今まで見えてこなかった問題が浮上することもあるのです。
ミーティングをせずしてスタッフ同士が一体となることはできません。そのため院長が中心となってミーティングを開き、診療所の現状と今後の目標などをしっかり共有することが大切です。特に開院直後は、ルールが未整備のため診療所の文化を作っていく上でも定期的なミーティングは必須です。開院直後からミーティングの文化を作ってしまえば、後から文句を言われることもないでしょう。はじめからミーティングのルールを作っておいた方が、後々のことを考えると楽です。
スタッフのモチベーションを保つことにもつながる…
これは特に女性にいえることですが、目的がない環境に置かれると、“人は次第にモチベーションが下がってしまう”傾向にあります。「今何をすれば良いのか…」が明確でなければ、「何をして良いのか…」も分からない。
ミーティングは、このような事態を避けるためにも非常に有効なものです。定期的な顔合わせを通して、院長が何を考えているのかを知ることができる上、業務上で感じる不安や不満、疑問点を院長に知ってもらえることで、改善策を出して良くしていこうというモチベーションにつながるのです。スタッフの中には非常に忙しい人もいます。
そのため、ミーティングを開きたいと思っても、参加が難しいスタッフも出てくるでしょう。しかし、それを理由にミーティングを行わないのはNGです。ミーティングには、必ずしも全員が集まっている必要はありません。
出席できなかった人に関しては、ノートや口頭などで後日共有しましょう。
院長は聞き役に…
ミーティングは院長を中心に…とは言っても、終始院長ばかりが話していたのでは、あまり良いミーティングとは言えません。あくまで、ミーティングは、“スタッフの意見を吸い上げるためのもの”として考え、院長は聞き役に徹するくらいの気持ちで挑む方が良いでしょう。そうすれば、ミーティングが活発な意見交換の場となり、院長やスタッフがそれぞれどのような想いを抱えているのかを知ることができる様になるのです。
意味のあるミーティングにするための4つのポイント
≪1≫事前にミーティングの目的、テーマを共有する
ミーティングを行う際は、事前にミーティングの目的やテーマを共有しておきましょう。単に日々の業務内容の確認なのか、院内改善を話し合う場なのかが予め分かっていれば、スタッフも準備ができるので、より有意義なミーティングとなります。
≪2≫多くの意見をスタッフ自ら出せる工夫
診療所の中には、院長が司会役を務めテーマだけを与えてあとはスタッフに発言させるという方法をとっている診療所もあります。また、議論するテーマを院長が決め、スタッフを数人のグループに分けて意見を出してもらうという方法も有効です。
≪3≫院長がすべての案に対してコメントし、採用案を決める
出してもらった案については、院長自らひとつずつコメントを返し、何を採用して何を検討するかを決めましょう。例え不採用にする案だとしても、案を出してもらったことに対してありがとうの気持ちを示すことも大切です。
≪4≫具体的にどうするのか次回のアクションを決める
ミーティングで出た改善策などについては、すぐに実行できるようリスト化して具体的な行動へ落とし込むことも大切です。せっかく良い提案が出たのに宙ぶらりんのままでは、ミーティングの意味も半減してしまいます。
※また、以下の様なルールを設けている診療所も増えてきました…!(下記は引用した画像です)
実施すべきミーティングの種類とそれぞれの目的
★朝礼:朝礼では、その日に知っておくべき“情報共有”を中心にミーティングを行います。特に、前日に発生したものでその日に引き継がなければならないものや、周知すべきものが発生した場合、また、その日に予約している患者さんの情報共有などが中心です。また、その日の院長の予定がいつもと違う場合なども朝礼で共有しておくとスムーズです。朝礼にはあまり時間を割かず、立ちながらできるくらいの短い時間で終わらせましょう。参加できなかった人については、朝礼ノートなどで情報共有を行うのが良いでしょう。
★終礼:終礼は、その日の最後に行います。毎日朝礼を行っている場合は不要かも知れませんが、朝礼ができなかった日や、どうしてもその日のうちに共有しておきたい事項が出た場合などに開きます。終礼は、朝礼のように情報共有をするだけでなく、院内改善を目的とする場合も多くあります。診療所の中には、終礼ではなくお昼の時間を使って行うところもあるようです。終礼でも、朝礼のように終礼ノートを作成し、どのような報告があったのかを書き留めておくことが大切です。その場にいられなかったスタッフも後で共有できるようにするためでなく、ミーティングを一過性のものにしないためでもあります。
★定例全体ミーティング:朝礼や終礼とは別に月に1度はじっくりと話し合える場を作りましょう。これは定例全体ミーティングと言われ、1~数時間使って院内にある改善事項について話し合う場です。
終礼などで、ちらほら挙げられる問題についてじっくり話し合ったり、来月の目標に向けてどのような改善が有効かなどという様に、テーマを決めてじっくり取り組むことが大切です。
◆最後に・・・
このように、院内ミーティングは、スタッフとの団結を強めモチベーションを上げる大切な場です。
良い診療所に良いミーティングあり。スタッフ一人一人の意見を上手に吸い上げられる場にするためには、これまで説明した方法の他にも、“ミーティングでの座席の座り方をざっくばらんにする”などして、発言しやすい環境を作るのも良い方法です。
「ミーティング」と聞くとどうしてもかたいイメージがありますので、ランチの後にお菓子を食べながら雑談するような雰囲気で行っても良さそうです…。
【3】スタッフが辞めない診療所の作り方とは…?
“診療所内のスタッフが定着している診療所”と、“始終入れ替わっている診療所”とがあります。
患者さんの目から見ても、診療所にとっても、“スタッフが始終入れ替わる”ということは、決して良いことではありません。
スタッフがすぐに辞めて入れ替わるということは、そこになんらかの問題点があるはずです。
何が問題となっているのか、院長はしっかりと考えておられるでしょうか…?
診療所の場合、給料その他の労働条件についてはそれほど大きな違いがあるわけではないので、そのことが原因で人が沢山辞めていくというケースは少ないです。
辞めていく理由の一番は、院長とスタッフとのコミニューケーション不足ということが考えられます。
「一生懸命働いているのに、先生からは評価されていない」と考え、注意されたのをきっかけにやめてしまうというパターンです。
・イライラして、スタッフに八つ当たりをしていないでしょうか…?
・きちんと言葉にして感謝を伝えているでしょうか…?
・問題があるのは、自分ではないのかと認識なさっておられるでしょうか…?
私は、毎日3分でも5分でも、一人一人と話をすることと、月に一度、スタッフ全員と30分くらいの個別面談を行い、スタッフが考えていることに耳を傾け、自分が考えていることを伝える機会を作ることをお勧めしています。
そして院長は、自分にきちんとフィードバックをもたらしてくれる「コーチ」をつけることです。
院長には、皆何も文句が言えず、それが結果として黙って辞めるということになります。診療所の中に、
「コミュニケーションを専門とした人」を入れ、スタッフの声を吸い上げる仕組みを作るのです。
それには、恐縮ですが、開業コンサルタントや税理士・社労士といった職業の方々では請け負えない役割です。
それはコーチの仕事です。また、診療所全体としての共通の目標を作り、理念を掲げることです。
スタッフ自体がそのために何をしたらいいのかと自発的に考えるようになり、仕事に対するモチベーションが上がり、その結果仕事が楽しくなっていくという良い循環が生まれて来ます。
「対話に溢れた、活き活きと明るく楽しい職場作り…」これがスタッフ定着のキーワードです。
【4】ある診療所での院長からスタッフへの感動のコトバとは…?
その日は、院長の「還暦」のお祝いでした。
札幌市内の某有名ホテル内の一流日本食店内での出来事です。
お料理も美味しくお酒もすすみ、最後に院長から参加されたスタッフに“おみやげ”を手渡した時のことです。
(あるスタッフ):
先生の“お祝い”なのに“おみやげ”までもらって逆なんじゃありませんか…?
(院長):
いやいや、この“おみやげ”を買うことも、今日の“飲み会の代金”も、
「みんなが患者さんのために一生懸命働いてくれたから」、その成果としてできることなんだよ…!
みんなの売上なんだよ…! 僕一人じゃできないから…
このコトバをいただいたスタッフの方は、感動されていたのが印象的でした。
CS向上につながる
四つのコミュニュケーションスキル
会話の促し
「それで…」「続けて…」「「もう少し詳しく…」といった言葉をかけ、患者さんの話に興味を
持っていることを示す。時には、医師が間をとり、待つ姿勢も求められる。
訴えの要約
相手の訴えを整理し、相互で確認する。これにより患者さんは、自分の訴えをきちんと受け止めてくれたと感じる。
訴えに対する共感
「それは、辛かったですね…」と相手の気持ちへの共感を示せば、患者さんの心も開きやすくなる。
ドアノブクエスチョン
診察の最後に、「他に何かありませんか…?」と一言加え。訴え足りなかったことがないか、
説明の中で理解できなかったことが無いかを確認する。
患者さんが不満を感じる二大要因
会話を途中で遮る
医療の専門用語が多い
【6】繁盛診療所のチーム・ビルディング
最近、診療所内における「スタッフ絡みの悩み」についての相談が増えています。
最近、相談をお受けした院長も長年診療所を経営されていますが、ここに来てスタッフの問題が浮上してきたとのことでした。
ここでは、診療所経営におけるスタッフマネジメントについて考えてみましょう。
「コミュニティ・マーケティング」とは…?
診療所経営を円滑に運営するためには、「コミュニティ・マーケティング・チーム」を整備する事がとても重要です。
様々な考え方の中で、「コミュニティ・マーケティング」は診療所にも導入しやすいと考えています。これは自院を受診する可能性のある患者さんのターゲット層を明確にして、これらの方々が望んでいる事を自院のサービスとして、わかりやすく伝えていくということです。
まず、開院するときに、診療科目を明らかにしてターゲットとなる患者層にアナウンスをすれば、第一ステップを踏み出した事になります。(選ばれる診療所であり続けるためには様々な施策を打ち出し具体的な行動を継続する必要があります。)
しかし、チーム作りはそう簡単にはまいりません。チームの構成員はスタッフをはじめとして、自院の運営に関わってくれる方々の事ですが、ここではスタッフに限ってお伝えしてまいります。
診療所経営を、ホスピリティ高く進めていくには、スタッフの協力は欠かせないものです。
院長一人では診療所の運営はできませんから…。しかし、私が今までにご縁があった院長のお話しを総合しますと、
このような環境を作るのに時間、手間を掛ける事ができていない院長が多いようです。
その原因は様々ではありますが、大きく以下のような事が挙げられます。
1:診療所の勤務ルールがない。ルールがあってもそれがスタッフに周知徹底できていない。
2:特定のスタッフに仕事を任せきりで、院長が関わっていない。
3:院長とスタッフのコミュニケーションが取れておらず、信頼関係がない。
1の「診療所ルールの不備」によって起こる典型的な問題は、開院してすぐにスタッフ全員が辞めてしまうなんて事があります。就業ルールが何も決まっておらず、社会保険加入の基準がなく加入もしていない、こんなケースの場合には、スタッフの離反が起こりえます。これではスタッフが不安で退職してしまうのも致し方ないです。また、ルールが無いままに経営をしていると、一般常識では考えられない無法地帯のような診療所になりかねません。これでは当然、経営もうまく回るはずがなく、新たに採用した常識的なスタッフさえもすぐに辞めてしまうなどという悪循環に陥ってしまいます。
この様な事を防止する為には、法律に沿った就業ルール(できれば就業規則)を作り、スタッフに周知し徹底することが重要です。就業ルールを作ると、有給休暇の取得など経営者にとって負担になる事もありますが、スタッフにルールを順守してもらうことにより、経営環境が良くなるというメリットもあります。また就業ルールは勤務状態の悪いスタッフに注意を喚起するための基準にもなります。よって就業ルールがない診療所は早めに作り、周知徹底し活用することをお勧めします。もちろん就業規則をお作りになられるのがベストです。
※就業ルール以外にも、診療所の理念は“あって当たり前”です。
2の「特定のスタッフに仕事を任せきりにしていることの弊害」は、そのスタッフに権力権限が集中してしまい、経営者を脅かす存在になってしまうという事です。業務全体を把握している人が1人だと、その人に大きな問題があっても、辞めてもらう訳にはいかなくなります。どうしても人はそんな状態になると、わがままや無理を言いだしたりするものです。
最悪のケースでは、スタッフを束ねて院長に反抗し始めたりなんて事もあります。これではストレスで診療にも悪影響が出ます。
このような事を防止するには、特定の人に仕事を集中させないで、スタッフ全員が様々な仕事ができる事を目指すチームビルディングを進める事が重要です。
そして、面倒がらずに院長が、「定期的にスタッフとのミーティング」を行い、現状を把握して課題があれば一緒に解決策を考えることです。こういった日頃からのコミュニケーションの積み重ねが大切です。
3の「院長とスタッフのコミュニケーション・信頼関係がない」ケースの弊害は深刻です。
信頼できない上司(院長)の下で一生懸命働こうとは誰も思わないので、スタッフが自主的に良い仕事をするとは期待できません。これでは患者さんに選ばれる良い診療所になることはできません。
そしてもっと怖いのは、“スタッフが院長に真実を伝えないという事…”です。
何か課題があった時に最も大切なことは現状を正しく把握するということです。
日々診療をしている院長は現場の状況を確認する事は困難ですので、スタッフから話しを聞くしかありません。
そして、特定の人の話しが信用できない時には、スタッフ1人1人からヒアリングする必要があります。その際に真実を話してもらえないと誤った現状把握しかできず、対策が打てないか間違った対策を打ってしまう事になります。これは実に恐ろしい事です。
この様なことを防止するためには、“日常的にスタッフ1人1人に意識を傾けて、コミュニケーションを取っていくという事が重要”です。
仮にほんのひと言でもスタッフにとっては有難いものです。状況によっては、院長がスタッフ全員とコミュニケーションを取る事が難しい場合もあるかもしれません。そんな時には、院長の右腕となってくれるような経営チームを作ると良いでしょう。
そして、その経営チームのメンバーと日々コミュニケーションを取るようにして下さい。
これまで、典型的なスタッフの問題とその解決策を伝えてきましたが、実際にはこんなに簡単に解決する事ばかりではありません。院長やスタッフ1人1人の個性、様々な環境の違いによって状況は千差万別ですし、対策もこれで大丈夫というものではなく、すべて個別具体的に考えていく必要があると思います。これは、日々診療で忙しくしている院長の立場を考えると、本当に過酷なことだと思います。
しかし、スタッフが明るく前向きに良い仕事ができる環境がないと、良い診療所を作る事はできません。
診療所経営とスタッフに正面から向き合って頂き、日々良い診療所創りに励んで頂ければと思います。
そして、一人では困難な時は、チームの一員である“外部の方々の力を借りる”事も検討してみて下さい。(院外経営幹部)
【7】毎日10分の朝礼を変えて診療所の雰囲気をリフレッシュ
ここでの特別レポートは、診療所の朝礼です。
今回レポートした内科診療所の診療開始は9時ですが、患者さんに対して診療所のドアが開くのは8時20分前後。それと同時に早出の職員によって受付業務が開始されます。そして、8時50分になると患者さんから見えない処置室の一角でみんなが立って10分間の朝礼が開始されます。
まず、当番のスタッフが枕言葉をつけて当日の受診予定患者数を午前と午後に分けて紹介します。休みを取っている職員の確認、内視鏡検査などの特殊検査の込み具合なども紹介されます。そして特別な行事がある場合にはそれもスタッフ全員に伝えられます。
その後を院長が引き取って、昨日の特殊な事例、今日の注意点などを含めた2分程度訓示。その後は、事務のリーダーと、看護師リーダーからの伝達事項が有れば話されます。この朝礼は開院2年目くらいの頃に私どもの勧めにしたがって後から始めたのですけれど、院長からは、この朝礼で全てのスタッフの顔色もわかりますし、何かを全体に伝えることもできるので、とても満足しているとのこと。この程度の短い朝礼でも、始める事への職員のコンセンサスを得るのは相当大変そうです。何しろ実際上は、この朝礼が行われるためにスタッフの出勤時間は10分以上早くなるわけですから…。
「うちの診療所はイマイチ活気がなく、雰囲気が重い…」。こうお考えの院長は少なくないでしょう。一方、診療所の雰囲気を変えてみたいと思っても、どこから手をつければいいのか見当がつきません。そんな時は、毎日10分程度の朝礼を見直してみることをおすすめします。
まずは「あいさつの徹底…」「スタッフのスピーチ…」
診療所の一般的な朝礼は、どんな感じでしょうか…?
各人が連絡事項を事務的に報告したり、院長や各部署のリーダーがスタッフに対して説教したり、果ては院長が思いついたことを延々と話したりと、スタッフにマイナスイメージを植え付けていないでしょうか…。
では、朝礼のどこを変えればよいのでしょうか…?
手っ取り早いのは「おはようございます…」「こんにちは…」「ありがとうございました…」というような、基本応対の挨拶を徹底することです。若手スタッフが音頭を取って、全員が大声で元気にあいさつするだけでも、院内が活気づくでしょう。
あるいは、当番のスタッフが毎回交代で「1分間程度のスピーチ」をするのも効果があります。そうすると、その人の言動の背景がわかるようになり、相手の立場でものを考えられるようになります。また、スピーチが苦手なスタッフにとって、絶好の訓練の場になるのも見逃せません。
「患者数の推移」と「ホットな話題」も忘れずに…
また、忘れてはならないのは、患者数の推移の発表です。患者数が増えたのか減ったのか、具体的な数値で伝達します。
日によって変動があれば、その理由を皆で考え、患者数が減った場合は「どうしたらよいか…」を考える様に促すことができます。
もうひとつ大切なのは「ホットな話題」を話してスタッフのモチベーションを高めることです。患者さんから褒められたスタッフのエピソードを発表したり、症状が好転した患者さんの事例を発表すれば、スタッフ全員の気分がよくなります。朝からホットな話題を聞くことで、一日中やる気に包まれて働けるのです。従来の朝礼のスタイルをすべて変えるのは難しいことです。スタッフの反発もあるかもしれません。しかし、ワンポイントだけの改善ならば、割とスムーズにいく可能性があります。スタッフの反応を見ながら徐々に改善を加えていくと、朝礼が盛り上がり、院内の雰囲気がリフレッシュすることでしょう。